同伴プレーヤーがインチキをしたらあなたはどうする? 指摘する? 見て見ぬふりをする? その相手がもしと時の大統領だとしたら…。有りえないような話がじつはあった!?

ゴルフは人生にたとえられる。自らがレフリーとなる稀有なゲームであることが“紳士のスポーツ”といわれる所以である。

「普段から時間にルーズな人にプレーするときだけテキパキしなさいといっても無理な話です。練習に熱が入らない人はコースでも活気がない。ゴルフは自分を映す鏡なのです」というのはアニカ・ソレンスタムや宮里藍らを指導し『ビジョン54』を主宰するメンタルコーチ、ピア・ニールソンだ。一度でも一緒にゴルフをすれば相手の性格や中身がわかる。端々に素の人間性が見えてしまうからだ。

米スポーツイラストレイテッド誌の元記者リック・ライリー氏の近著『Commander in Cheat(インチキ司令官)』が全米で話題だ。そこにはドナルド・トランプ大統領がプレー中に繰り返す数々のインチキエピソードが綴られているのだが、紳士のスポーツとは程遠いその内容に驚くというよりもはや笑うしかない。

たとえば来年の全米オープンの舞台でトランプ氏もメンバーのコース、ウィングドフットでの一コマ。メジャー大会の理事のひとりであるブライアン・マーサルさんがはじめて大統領とラウンドしたときのこと。

「土曜日の朝でした。彼(トランプ氏)は1番ティでこれ以上ないくらい紳士的な挨拶をしてくれました。でも他の同伴プレーヤー2人のことを“彼らはインチキをするんだ。私? もちろんするさ。キミと2人であいつらを負かさなきゃならない。そのためにはキミもインチキして構わないぞ”といってきたのです。彼は誰もがインチキをするものだと思っている。だから自分のは大したインチキではないという理論です」(マーサルさんの証言)

ゆえにトランプ大統領はまるで息をするようにインチキをする。ティショットを打ち終えると真っ先に第2打地点にカートを走らせラフにある球を蹴ってフェアウェイに出すのは日常茶飯事。ウィングドフットのキャディたちは繰り返される暴挙を見て見ぬふり。だが陰で大統領のことを「ペレ」と呼んでいる。

画像: 息をするように"インチキ"するというトランプ大統領(写真は2016年のWGCキャデラック選手権)

息をするように"インチキ"するというトランプ大統領(写真は2016年のWGCキャデラック選手権)

大統領に就任してほどなくトランプ氏はタイガー・ウッズとダスティン・ジョンソン、ベテランのブラッド・ファクソンを招いてラウンドを楽しんでいる。そのときもタイガー&ジョンソン組にファクソンとのペアで戦いを挑んだトランプ氏はこんなことをやらかしている。

「あるホールで彼がダフって2打目を池に打ち込んだんだ」とファクソン。「すぐにボールを寄こせといわれて渡した。するとまたダフって池ポチャ。するともともと打ちたかった地点までカートを走らせそこからグリーンに乗っけたよ」

タイガーは2打目をピンそば50センチにぴたりとつけ楽々バーディ。すると大統領は本来大目に見ても7打目であるはずピンまで6メートルのパットを「パーパット」といい放った。ファクソンは笑うしかなかったというが「一緒に回って本当に楽しかったよ。彼はすべてのパットをコンシードだといってカップインせずに拾い上げていた。そんなエピソードが数え切れないほどある」

新ルールでヒザの高さから行わなければならないドロップを肩の高さからしてそのままプレーを続行したら1打罰が科される時代に大統領の好き勝手を野放しにする理由は?

「だって面白いじゃない。どんな手を使うか目撃すればネタとして皆に話すことができるからね」(ファクソン)。もちろんタイガーもジャック・ニクラスもインチキと知りつつ付き合っているということになる。

自分のショットをラフからフェアウェイに蹴り出すだけでなく、ナイスショットした相手の球をグリーンからバンカーに蹴り落とすこともあるという大統領。彼がやっているのはもはや勝つことだけを目的としたゴルフとは違うゲームだ。

ファクソンのいうようにこれはネタ。笑い話というほかない。だが一事が万事ということわざがある。ゴルフでの振る舞いは日常を映す鏡なのだ。このような人物を大統領に据えるアメリカは懐が広い…?

撮影/有原裕晶

HONMA

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