国内女子ツアー「KKT杯バンテリンレディスオープン」で優勝まで1打差に迫り単独2位でフィニッシュした吉本ひかる。7試合でトップテンが4回と抜群の安定力を誇るスウィングをプロゴルファー・中村修が解説。

昨年の獲得賞金が19試合で約440万円だった吉本ひかる選手。今シーズンは7試合で既に1926万6千円を稼いで賞金ランク8位、トップ10回数4回は1位と、“覚醒”と言いたくなる活躍をしています。

画像: 今シーズンブレイク中の吉本ひかる

今シーズンブレイク中の吉本ひかる

飛ぶほうではありませんが、パーオン率が高くてバーディ数が多く、しかもグリーンを外したときのパーセーブ率も6位と非常に高いことから、ショットの精度に加えてアプローチとパットの向上が好調の要になっているようです。

たとえるならば、菊地絵里香選手や青木瀬令奈選手と似たプレースタイルと言えるでしょうか。そのスウィングを見てみましょう。

写真Aを見ると、グリップはスクェアで左右の肩の高さの差はほんのわずか。右肩があまり下がらない、どちらかというとアイアンを打つときのようなアドレスをしています。

トップでは、見ての通り最近ではやや珍しくなってきたオーバースウィングが目を引きます。152センチと小柄な体ながら下半身をどっしりとさせ深いバックスウィングをとるのが特徴です。フェースの向きは空を向くシャットフェースでダウンスウィングに入る前にボールをつかまえる準備が整っています。

画像: 写真A スクエアグリップのアドレス(写真左)からシャットフェースで深いバックスウィング(写真右)が特徴

写真A スクエアグリップのアドレス(写真左)からシャットフェースで深いバックスウィング(写真右)が特徴

写真Bを見ると、切り返して以降左の手首が手のひら側に少し折れ、フェースが閉じながらダウンスウィングに入り(写真左)、インパクトでは左手の甲がターゲットを向き方向性の良さを感じさせます(写真右)。

画像: 写真B:切り返し(写真左)以降はフェースを閉じる動きが入り、インパクト(写真右)では左手の甲がターゲットに向く

写真B:切り返し(写真左)以降はフェースを閉じる動きが入り、インパクト(写真右)では左手の甲がターゲットに向く

フォローからフィニッシュに向けてはクラブを縦に振るのではなく体の回転に従ってフラットに振っています(写真C)。フェースを思い切りターンさせてつかまえるのではなくトップからの切り返しでフェースを閉じながら下ろし、体の回転でボールをつかまえて打っています。フェースの急激なターンをしないことで安定した方向性を確保しているようです。

画像: 写真C:フェースの開閉を抑え、フラットに振り抜く

写真C:フェースの開閉を抑え、フラットに振り抜く

ドライバーのプッシュアウトに悩んでいるゴルファーであれば、右肩を下げ過ぎない彼女のアドレスをマネしてみるといいでしょう。アドレスで右の肩を下げ過ぎるとインサイドアウトの軌道が強くなりやすく、フェースが右を向いて当たりやすくなってしまいます。

逆にドライバーでもダウンブローが強くテンプラするような場合は、ティアップしたボールに合わせるように少し右肩を下げたアドレスにすると入射角がゆるやかなアッパー軌道になりスピン量も減り飛距離を伸ばせる可能性があります。

すでにシード権は半ば手中に収めたと言ってもいい吉本選手、今シーズンどこまで成長してくれるのでしょうか。これからも優勝争いを繰り広げ、近い将来初優勝を挙げる姿を楽しみに待ちたいと思います。

写真はダイキンオーキッドレディス(撮影/姉崎正) 

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