飛距離の無さをカバーできる操作優先のセッティング
多くの選手がドライバーの平均飛距離が300ヤード超えを記録する中、モリナリの平均飛距離は5月1日現在で289.9ヤード。ランキングにして127位だ。世界ランキング上位10人の中でも300ヤードに達していないのはモリナリだけ。にもかかわらず、7位と上位にいるのである。
ドライバーのシャフトは「三菱ケミカルTENSEI CK ホワイト70TX」。これはハードヒッターのロリー・マキロイと同じで、余計なねじりやしなりが少ないのが特徴のシャフト。モリナリはドライバーも自分で操作したい選手。シャフトがしなると自分でとりたいタイミングがとれないのだろう。
それに合わせたヘッドは「キャロウェイ エピックフラッシュ サブゼロ」。9度のロフトをさらに2度立てて7度にして使っている。7度でもアッパーに打つモリナリであれば自分で高さを出せるのだ。もうひとつロフトを立てる理由として、ロフトが立っていれば立っているほどエネルギー効率は上がるということがある。
モリナリのセッティングの特徴として挙げられるのは、ウッド型とアイアン型、両方のユーティリティを入れていることだ。アイアン型のユーティリティはロフトが立っているため高さは出ないが、ラインを出して正確にボールを置いていくための武器。
ウッド型のユーティリティは高さを出してグリーンを狙うための武器。このユーティリティの打ち分けはアマチュアも参考にもなる。
マスターズでも、アイアンの切れとパターで上位にいたモリナリ。4番アイアンだけをキャビティにして5番アイアン~ピッチングウェッジはマッスルバック。4番アイアンだけキャビティなのは、高さを出すためだろう。それ以降のマッスルバックでキレと正確さを補っている。
最後に、モリナリのマスターズでのパッティングは目を見張るものがあった。彼が使っているのはシンプルなピンタイプ「オデッセイ トゥーロン マディソン」。ピンタイプは、ダメなときはとことんダメだけど入りだしたら止まらないという調子によるパター。
意図した通りに動いてくれるパターということで、パワーがない人が上位にいるということはパターとの相性が良く技術が高いのだ。
モリナリは自分のパワーのなさをわかっていて、ユーティリティを複数本入れ、4番アイアンをキャビティにするなど極力ミスを減らしたい方向のセッティングを採用している。それでいて、5番以下のアイアンはマッスルバック。単品ウェッジは3本いれて、パターも操作性の高いピンタイプを採用するなど、狙うクラブとのメリハリも効いている。
この割り切ったセッティングの力も借りて、世界のトップランカーの座を勝ち取っているのだ。
【フランチェスコ・モリナリの14本】
1W:キャロウェイ エピックフラッシュ サブゼロ(7度、TENSEI CK ホワイト70TX)
3W:キャロウェイ エピックフラッシュ サブゼロ(15度、TENSEI CK ホワイト80TX)
UT:キャロウェイ XフォージドUT(18度)
UT:キャロウェイ APEX ハイブリッド(20度)
4I:キャロウェイ APEX PRO
5I~PW:キャロウェイ APEX MB プロト(DG X100)
ウェッジ:キャロウェイ MD4(50、56、60度)
PT:オデッセイ・トゥーロン マディソン
ボール:キャロウェイ クロムソフトX
解説/小倉勇人 撮影/姉崎正