3月に開催された“第5のメジャー”といわれる『ザ・プレーヤーズ選手権』で、PGAツアー通算15勝目をマーク。
今季メジャー初戦の『マスターズ』では、4大メジャーすべてのタイトルを手にする、史上6人目のグランドスラム達成が期待されたローリー・マキロイ。結果は21位タイに終わったが、最終日に68(-4)と意地を見せ、今季残りのメジャー3大会での活躍に期待を抱かせた。
そんなマキロイの現在のスウィングを、プロコーチの内藤雄士はどう見ているのか。
「メジャーを立て続けに制していた2011~2014年の頃と比較しても、かなりスウィングの質が高くなりましたね。いま、誰のスウィングがいちばんキレイかと聞くと、ほとんどのプロが“マキロイ”と答えますからね」
その要因として挙げられるのが、トレーニングによる効果だという。
「昔は“アスリート=パワーアップ”というのがトレーニングの常識でしたが、現在はパフォーマンスを上げるための理論が進化しています。ゴルフ界でも、従来のようなパワートレーニングではなく、バランス系トレーニングによる体幹の強化や、筋肉や関節の柔軟性、可動域のアップが重視されています。マキロイも身体の理に適ったトレーニングによる肉体改造が成功し、それがそのままスウィングにも表れています」
2016-17年シーズン、マキロイは肋骨の疲労骨折や、背中と腰の痛みといった故障に悩まされた。その辛い経験から、トレーニングに対する意識や方向性を見直したのだろう。
「トップポジションで右の肩甲骨周りや広背筋が盛り上がっていて、正面からでも見えるぐらい捻転していますよね。ここまで胸椎を動かせるのは、いかに柔軟性が高いかという証拠。よく、“腰を回せ”といいますが、身体の機能からいうと、腰椎は動かさず、下半身と胸椎を動かすのが、正しい捻転の動きなんです。マキロイは肩甲骨や広背筋の高い柔軟性によって、理想的なトップの形を作ることができています」
また、ダウンスウィングからプレインパクトにかけても、理想的な動きができているという。
「無理に顔を残そうとせず、ターゲット方向を向くのが早いですよね。プレインパクトでは、タイガー・ウッズやダスティン・ジョンソンと同じように、手元がヘッドよりもかなり先行したハンドファーストで、腰と胸の捻転差も以前より小さくなっています。
従来は下半身と上半身の捻転差を大きくして、身体とヘッドとの引っ張り合いで飛ばしていたので、インパクトでは腰が先行して左に向くのに対し、顔と胸はボールの手前を向いていました。体の回転スピードで飛ばす、現在のダウンからインパクトの動きは、身体への負担が少なく、最新のギアにもマッチした理想的な形といえます。フォローでは手元が低い位置を通り、フィニッシュでは正面から背中の全面が見えるぐらい、ショルダーローテーションが大きい。今季残りのメジャーでの完全復活を予感させる、完成度の高いスウィングです」
まずは今年から5月開催に変更され、2週間後に迫った全米プロで久しぶりのメジャー制覇がなるか、注目だ。