ゴールデンウィーク最後のお楽しみは第60回の記念大会を迎えた中日クラウンズ(名古屋ゴルフ倶楽部 和合C)。最終日は誰かが伸ばして馬群から抜け出すと、またスコアを落とすシーソーゲーム。一時首位に4人が並ぶ大混戦になるなか熱戦を制し令和初のチャンピオンに輝いたのは昭和生まれのベテラン宮本勝昌だった。

今平周吾が先に通算8アンダーでホールアウト。宮本は最終ホールで10メートルものパットを決めなければ昨年の賞金王とのプレーオフにもつれ込むところだった。

打ち出しはスライスして最後は軽くフックするスネークライン。距離の長さからして宮本本人も入るとは思っていなかった。「2パットでプレーオフか」。

ところが曲がりを気にせずカップに真っ直ぐ打つイメージで放ったバーディパットは美しい軌跡を描き最後のひと転がりでカップの右端に吸い込まれた。呆気にとられる本人を尻目にハウスキャディの遠竹則子さんが泣いている。その姿に思わずハグ。

「いい勝ち方をしましたね。こんな勝ち方があるんですねぇ。なんか夢みたい」。昨年シード権を失った46歳はしみじみとそう呟いた。

画像: 令和初のチャンピオンに輝いたのは宮本勝昌(写真は2019年のSMBCシンガポールオープン 撮影/姉崎正)

令和初のチャンピオンに輝いたのは宮本勝昌(写真は2019年のSMBCシンガポールオープン 撮影/姉崎正)

グリーンサイドでは昨年股関節の手術を受け試合をセーブしていた師匠・芹澤信雄や兄弟子の藤田寛之、弟弟子の上井邦浩らチームセリザワの面々が勢揃いでチャンピオンを出迎える。

レギュラーツアーでは実に7年ぶりの予選突破を果たした芹澤は「この場にいられてうれしい」と満面の笑み。師匠を心の底から尊敬する宮本は芹澤が喜ぶ顔を見て泣きそうになった。

良いときも悪いときも支え続けてくれた妻・朋美さんと2人の息子が頼もしいパパに駆け寄る。昨年は細菌の感染が原因のめまいを発症し、持病の腰痛も再発。00年から守ってきた賞金シードを初めて手放した。

素質は40代で賞金王に輝いた藤田以上といわれながら藤田の通算18勝に対して宮本はこれが17年のダンロップ・スリクソン福島オープン以来ツアー通算12勝目。芹澤は敢えて取材陣に囲まれる藤田の姿を宮本に見せ奮起を促してきた。

「宮本は目立ちたがりで注目されるのが大好き」と師匠は弟子の性格を分析しており、再びスポットライトの中心に立った男はその勢いのまま若手の防波堤になりそうだ。

それにしても最終日の1番ダボスタートで最後は10メートルのバーディを沈めて勝つとは何とも劇的ではないか。師匠を筆頭に心優しいチームセリザワの優勝を見るのは悪くない。

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