セッティングの中核をなすアイアン選びはいつでも悩ましいもの。マッスルバック、キャビティバック、ポケットキャビティに中空……とアイアンにも様々なタイプがあるから尚更だが、今回はキャビティアイアンについて、業界屈指のギアオタクでクラブフィッターの小倉勇人が考えた。

みなさんこんにちは、ギアオタク店長の小倉です。以前マッスルバックアイアンを題材にした記事を書かせて頂いたのですが、それを読んだお客様がマッスルバックを打たせて欲しいとご来店くださいました。

早速いくつかのシャフトで試打して満足気に帰っていただけたのですが、帰り際にボソッと「マッスルバックが進化しているのは体感できたので、他のタイプもどう進化しているのか教えて」とリクエストを頂きました。なので今回はアイアンの中でもとくにキャビティタイプの進化具合を題材にお話ししたいと思います。

現在販売されているアイアンのヘッドは大きく分けてマッスルバック、キャビティバック、ポケットキャビティの3タイプに分類できます。マッスルバックはバックフェースが肉厚に設計されているモデル。機能としてはヘッドの操作性が高く、ボールをコントロールしやすいというのが最大の特徴で、その反面ミスした時の補正能力が高くできないという側面があります。

また芯で打ったときに余計な振動が少ないために打感が澄んでいて、芯を外したときにはっきりとした打感の違いが生まれるため、フェースのどの辺で打ったのかなどの情報が手に伝わりやすいフィーリング面を重要視するゴルファーに支持されているモデルでもあります。

また、マッスルバックは軟鉄素材だけで精製されているものが多いですが、最近では重心位置を調整して性能を追求するために、バックフェースやソールに比重の異なる金属を埋め込んだモデルも存在します。これが現代の難しすぎないマッスルバックを生み出している要因のひとつでもありますね。

画像: バックフェースに溝のようなポケットがあるポケットキャビティタイプの「ミズノプロ 719」

バックフェースに溝のようなポケットがあるポケットキャビティタイプの「ミズノプロ 719」

キャビティバックは、現在のアイアンの主流と言えるモデル。バックフェースを削り、その分の重量を外周に配分することによって、芯を外したときのヘッドのブレを抑えることでミスしたときの曲がり幅や飛距離ロスを軽減させることを狙った設計になっています。

バックフェースの削りが深いほどこの補正能力が高くなり、ミスに強く、直進性の高い弾道が打ちやすくなりますが、その反面、操作性は低くなります。

バックフェースの削りの深さによってハーフキャビティ、フルキャビティなどと細かく分類されていましたが、最近はそれほど細かく分類することがなくなってきました。というのもキャビティタイプはどうしてもフェース裏が肉薄になってしまうためインパクト時の余計な細かい振動が生まれやすく気持ち良いと感じる打感が作りにくいのです。

そのデメリットを解消するため衝撃吸収機能を持ったバッチを削ったバックフェースに張り付けることが多くなり、その結果削りの深さが分かりにくくなったのがひとつの要因でしょう。またキャビティバックもマッスルバック同様、比重の違う金属を使って性能を追求しているモデルが多く存在しており、削りの深さだけでは性能を比較できなくなったことも大きいと思います。

比重の違う金属の使い方は、マッスルバックと同じように重心位置の調整だけに使うモデルもありますが、より大きな効果を狙うためフェース面全体に硬い金属を使い、薄く仕上げてより多くの余剰重量を生み出すことで重心を深く低く設計し、さらにミスの強さを追求したり、ロフトを立てて飛距離を追求したりとさらに幅広い使い方になっています。

画像: ミズノプロ の「319」(右上)はキャビティタイプ

ミズノプロ の「319」(右上)はキャビティタイプ

最新のキャビティは、マッスルバックに近い操作性を重視したモデルからミスへの補正能力や飛距離を追求したモデルまで幅広くラインナップされているので好みに応じて選べます。もうひとつのヘッドタイプのポケットキャビティはキャビティタイプよりさらにミスへの強さや飛距離性能を追求するために生まれたタイプで、とにかく機能優先で設計されています。

フィーリングや操作性を第一に考えるならマッスルバック、とにかくクラブに頼りたいと考えるならポケットキャビティ、どちらも両立したいと考えるなら中間に位置するキャビティタイプの中から、操作性、ミスへの補正能力どちらを重視するかによってモデルを選ぶと良いでしょう。

キャビティタイプの中での性能の見分け方は、ソールの厚さに表れています。ソール幅が薄いタイプは操作性重視、反対にソール幅が厚めのモデルはミスに強いモデルと判断することができますよ。

キャビティタイプとポケットキャビティタイプも見た目が似ています。これらの見分け方は、ソール後方が文字通りポケットのようにくり抜かれているかどうか。ポケットキャビティの詳しい機能についてはまた別の機会にご説明しますね。 

撮影/小林司

画像: DJとローズでは大違い!フェースはいつ閉じるのが正解なの!?~鈴木真一~ www.youtube.com

DJとローズでは大違い!フェースはいつ閉じるのが正解なの!?~鈴木真一~

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