ほけんの窓口レディースで11試合を終えた2019年の女子ツアー。ここまで10人が優勝を手にしているが、その10人は「黄金世代に属している」新世代か「過去に賞金1億円以上を稼いでいる」実力者に二分される。この状況を、女子プロを多数指導するプロコーチ・井上透に分析してもらった。

ツアー3勝目(アマ1勝含む)を挙げた勝みなみに、ともに嬉しい初優勝を挙げた河本結、そして渋野日向子。今季の優勝者のうち、1998年度生まれの“黄金世代”は3名いる。

残りの7名、すなわち、比嘉真美子、鈴木愛、上田桃子、成田美寿々、シン・ジエ(2勝)、イ・チヒ、イ・ミニョンは、過去に単年の賞金額が1億円を超したことのある、ツアー屈指の実力者たちだ。

画像: アクサレディスで初優勝を遂げた黄金世代・河本結(撮影/岡沢裕行)

アクサレディスで初優勝を遂げた黄金世代・河本結(撮影/岡沢裕行)

圧倒的な勢いか、圧倒的な実力がなければ勝てない。一見してそんな風に感じられるが、プロコーチ・井上透はこの状況をどう見るか。

「勝っている選手の顔ぶれは、単純に現状強い選手、上手い選手たちです。黄金世代の選手たちはプロになって急に強くなったわけではなく、アマチュア時代からレベルが高く、彼女たちがツアーに入ってきたらツアー全体のレベルが上がるだろうなと考えていましたが、それが現実になっています」(井上、以下同)

画像: サロンパスカップは弱冠20歳の渋野日向子が制した(撮影/岡沢裕行)

サロンパスカップは弱冠20歳の渋野日向子が制した(撮影/岡沢裕行)

黄金世代の世代的特徴は、パワーもあって飛距離も出る点だと井上は指摘。男子ツアーは平均300ヤード時代に突入しつつあるが、黄金世代の台頭により女子ツアーも平均飛距離が上昇、そのことでツアー全体のレベルも上昇しているという。

「女子ツアーは平均250ヤード時代に突入し、260ヤードも見えてきている状況です。それに伴い、従来は2オーバーのカットラインが1オーバー、イーブンパーといった風に変わってきています。優勝スコアも上がっていますし、勝つためにはよりアグレッシブな攻め方が求められようにもなっています。そんな中、既存の選手はレベルが上がってこないと消えていってしまうという状況です」

井上は、“過去にこれほど実力のある世代はいなかった”と認める。たとえば宮里藍と横峯さくらは同学年だが、“藍・さくら世代”という言い方は一般的ではない。一方「強い藍ちゃん、さくらちゃんに憧れた世代」である黄金世代は、世代全体のレベルの底が非常に高い。これはいったい何故なのか。

「SNSの発展により、今の時代はプロとアマチュアで情報のラグ(格差)がありません。クラブやフィジカル、バイオメカニクスなど、高度な情報に基づいた指導をプロになってから学ぶのではなく、アマ時代から学んでいるんです」

アマチュアでも勝つ、プロでもルーキーイヤーからいきなり勝つといった黄金世代の活躍は、プロとアマチュアの「やっていることが同じ」であることが原因だと分析。ジュニア時代からプロと同じことに取り組めば、その分寄り道せずに一直線に上手くなれる。同世代に15歳で勝った勝みなみがいたことで、ジュニア時代から「ツアーで勝つ」ことにリアリティを持てた世代でもあるだろう。

「黄金世代と実力者、ということではなく、黄金世代のうちの何人かはすでにトップクラスの実力を持っています。今後、彼女たちの何人がツアーの中で生き残れるのか、勢いだけでなく本物の実力が問われるようになるのではないでしょうか。もちろん、数年後に開花するまだ見ぬ黄金世代の選手もいるはずです」

黄金世代のふたつ下の世代(2000年度生まれ)では、今年高校を卒業した安田祐香、西村優菜、吉田優利らを擁する“プラチナ世代”が爪を研ぐ。もちろん、黄金世代の大量流入によりシードの危機が現実となりそうな上の世代もこのまま黙っていないはずだ。

黄金世代にプラチナ世代、それより上の世代の実力者たち。複数の年代のプレーヤーたちのツアー生き残りをかけたガチンコ勝負が見られるからこそ、女子ツアーは面白い。

画像: 狙うアイアンは8番から?パーオン率どう上げる? www.youtube.com

狙うアイアンは8番から?パーオン率どう上げる?

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