6番、8番、PWが「左用」の“左右両打ち”
こんにちは、ケンジロウです。男子ツアーの関西オープンが行われている奈良県のKOMAカントリークラブからお届けしております。
さて、今回のお話は……。“見出し”でわかったでしょう。そう、関西オープンに出場している選手の中に右打ちと左打ちを上手く使いわけるプロがいたんです。ティショットを右で打ったあとに、2打目を左で打つ。なんて器用な……。そのスイッチヒッターの名は高橋慧(ケイ)プロ。現在21歳で、今は下部ツアーの「AbemaTVツアー」を主戦場としています。
思い返すと、4年前の福島オープンで彼の取材をしていましたね。当時はアマチュアでの出場で、まだまだ“ジュニア感”がぬぐえない細身の子という印象でした。久しぶりにあった高橋クンは体も少しがっちりしてたくましくなっていましたね。
高校を卒業したのちプロになりましたが、なかなかすぐには日本のツアーには出られず、フィリピンツアーに参戦するなどして海外のタフな環境でもまれてきました。そして今回の関西オープンは予選会で67を出しての出場。練習ラウンドで久しぶりに彼のプレーを見てきましたよ。
バッグの中身を見ると、14本の打ち分けは1W、3W、5W、3UT、5~PW、48度、54度、58度、PT。そのうちの6Iと8IとPWが左利き用なんです。
そもそも左打ちを始めたのは「練習のためでした」と高橋クン。確かに練習で左打ちをするプロは今でこそ多いですが、実際に試合でもそのまま左でも打ってしまうのは見たことがないですよね。
高橋クンのお父さんが言うには「子どものころから慧をプロにさせることを考えていて、他のプロが真似できないようなことをさせたかったんです。注目を浴びてもらって人気が出ればスポンサーもつくだろうし、取材も増えるだろうし、本人のモチベーションが上がりますからね」とジュニアの頃からプロになってからのビジョンを考えていた様子。
実のところ、キャディバッグには「JIO WORKS」のロゴが入っていて、もうすでにスポンサーがついていましたね。それにしても、左と右を交互に打ち分けるなんて、本当に器用ですよね。頭の中の思考回路、どうなっているんだろう。こんがらがらないのかなぁ。
利き手は「右」だが、「左」のほうが飛ぶ
基本的に右も左もドローで、両打ともフェードも打てるそう。アプローチ&パットだけは、右打ちじゃないと距離感が出ないそうです。聞いていて驚いたのは、「どっちも調子が悪くなる時はない」ということ。つまり右打ちが調子悪くても左打ちは調子が良かったりするということ。となるとスイッチヒッターは不調になりにくいのかもしれないですね。
今は左打ちの調子が良くて、本人曰く「全部ピンに向かって飛んでいく」と言うほど。左用のドライバーも一応用意してきたらしいのですが、まだ右打ちほどの精度はないそうです。
「調子良かったら使おうかと思っていたんですけど、左のドライバーのほうがちょっとつかまりにくく、思った球が出ないときが多いんです」ちなみに右打ちドライバーは285ヤードキャリーするのに対して、左打ちでドライバーを打ってしっかり当たったときは左のほうが5~10ヤード飛ぶらしいです。
「なぜ左のほうが飛ぶのか理由はわからないんですけど、アイアンも若干飛ぶんですよね」と高橋クン。書くのも食べるのも、投げるのも蹴るのもみんな右手で、利き手は右手。左で打つ時は、利き手の右手がしっかりリードしてくれてヘッドスピードが出て飛ぶのかな? 右打ちだけで回ったときと、左打ちだけで回ったときどっちのほうがスコアがいいかを聞いたところ、「右のほうが1、2打いいですね。やっぱりショートゲームで差が付きます」(高橋クン)とのこと。
関西オープン初日は68を出して堂々の5位タイに立った高橋クン。プロとして初めてのレギュラーツアーで最終的に上位に食い込めるか? なんとも面白い“スイッチヒッタープロ”。今後も注目して見ていきたいですね。
6月21日(木)発売の月刊ゴルフダイジェスト8月号では高橋クンのスウィングをもっと詳しく解説しますよ。
撮影/有原裕晶