タイガー・ウッズの鮮烈な優勝シーンが記憶に新しい今年のマスターズ。練習日から現地で取材をした吉田洋一郎が、飛距離を伸ばし続けるPGAツアーの選手たちを見て、ある事に気がついた。

過去にもあった飛距離を求めた時代

年に数回、PGAツアーの取材で現地を訪れますが、そのたびに彼らのドライバーショットの迫力と飛距離には驚かされます。近年では、平均飛距離の数字は高止まりをしている感がありますが、それでもたびたび伸び続ける飛距離に対して議論が起きています。

もちろんコースにもよりますが、コンスタントに300ヤードを打つことができなければ常に上位で戦うのは難しいだろうなという印象です。つまり現代のトップツアーにおいて「飛ばせる」というのは武器ではなく、最低限必要な能力になったのです。

日本人選手が世界で戦うために飛距離不足を言及されることがありますが、それは同じフィールドで戦う選手たちの飛距離が底上げされている背景があるのです。

画像: オーガスタを設計したひとり、ボビー・ジョーンズはアマチュアながらメジャー7勝挙げている。

オーガスタを設計したひとり、ボビー・ジョーンズはアマチュアながらメジャー7勝挙げている。

このようにさまざまな技術的要素の中で、飛距離が大きなウェートを占める事は過去にもありました。それはクラブヘッドやシャフトにまだパーシモンやヒッコリーなどの木が使われていた20世紀前半の時代です。クラブの性能で飛距離を出すことができないので、プレーヤーは自分たちの力を最大限に利用し飛距離を出そうとしていました。

地面反力を使ってヘッドを走らせている

近年プレーヤーの飛距離の伸びに伴い、マスターズが開催されるオーガスタナショナルGCでも、たびたびコース改造が行われてきました。賛否両論があると思いますが、今年マスターズに取材し、戦略性を保つためにはコースの飛距離を伸ばすことも必要であると思いました。

このオーガスタを設計したのはアリスター・マッケンジーとボビー・ジョーンズの2人。マッケンジーは設計家ですが、ジョーンズは生涯アマチュアながらメジャー7勝を挙げた名プレーヤーです。

画像: ジョーンズ(左)とケプカ(右)は腰を開かず、フォローで左足が伸びている

ジョーンズ(左)とケプカ(右)は腰を開かず、フォローで左足が伸びている

ジョーンズがプレーヤーとして活躍したのは20世紀前半。しならないシャフトに反発係数の低いヘッドを使っていた時代でした。彼のスウィングを改めて見てみると、現代の飛ばし屋たちと体の使い方にいくつかの共通点があります。

それは切り返しで左足を踏み込み、地面からの反力(地面反力)を使い体を回転させている点です。テークバックで左かかとを上げ、それを切り返しで踏み込む動きはババ・ワトソンのそれと酷似しています。

クラブや腕がダウンスウィングに入る前にヒールダウンする、このちょっと早めに足を動かすタイミングが秀逸です。トップでクラブの反動を使って適度の間ができており、これが飛ばしに有利に働いています。

画像: 全米プロを2連覇したケプカとジョーンズは共通する動きがあるという(写真は2019年の全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

全米プロを2連覇したケプカとジョーンズは共通する動きがあるという(写真は2019年の全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

ジョーンズはダウンスウィングの動きについて「腰を回さないように」と述べています。これは先日全米プロを制したブルックス・ケプカの動きと共通するものです。垂直軸の回転ではなく、地面反力によって左サイドが伸び上がり肩が縦回転する前後軸を使う動きです。

球聖と呼ばれたジョーンズは、計測機器がない時代に飛ばしに必要な体の使い方を自らの力で習得していたと言えるでしょう。

もし彼が現代のクラブ使っていたのなら、300ヤードは優に超えるショット繰り出していたはずです。そんなジョーンズならどんなオーガスタに改造するのだろうなと、飛ばし屋たちの戦いを見ながら思ったのでした。

This article is a sponsored article by
''.