5月とは思えない暑さに見舞われた日本列島。ゴルファーにとっては熱中症が心配な季節が早くもやってきてしまったが、武蔵野美術大学の北徹朗准教授が実験で明らかにしたところによれば、熱中症対策には「帽子のかぶり方・選び方」が重要なのだという。早速、その実験レポートを見てみよう!

男性用日傘、かぶる傘などが相次いで話題になっている

環境省は2019年5月21日に熱中症対策の一環として男性も日傘を活用するよう呼びかけを始めた。このきっかけとなったのは、同省が2018年度に全国9自治体と協力し「暑さ指数」を調べたところ、日傘をさした場合、ささなかった場合と比べて1~3度低くなり、強い日差しを遮ることで汗の量が約17%減るというデータを得たことによる。

また、5月24日には、東京都の小池百合子都知事が「かぶる傘」を発表し話題となった。今夏、東京都ではオリンピック・パラリンピックのテストイベントで活用する方針とのこと。

こうした報道が話題となっている最中の5月26日午前11時ごろ、北海道清水町のゴルフ場で男性が倒れ、熱中症の疑いで病院に搬送されたが死亡が確認された。この日、北海道は猛暑に見舞われ清水町に近い帯広市の最高気温は38.8度まで上昇していた。この日、年間を通して北海道の史上最高気温を更新したという。

東京オリンピック・パラリンピック開幕まであと1年あまり。男子は2020年7月30日(木)~8月2日(日)、女子は2020年8月5日(水)~8日(土)にそれぞれ開催される。

画像: 水分補給は勿論のこと、どんな熱中症対策をしたらいいのか?

水分補給は勿論のこと、どんな熱中症対策をしたらいいのか?

前述のように、5月の北海道で39度近い暑さを記録するなど、近年の猛暑は異常であり、2020年の真夏の東京大会における熱中症の懸念はますます高まっている。ゴルフの場合、他よりも競技時間が長いため、選手だけでなく、スタッフや観戦者の熱中症対策も必要だ。

グリーン上では帽子内温度が急上昇する

真夏のゴルフで帽子は必需品だが、帽子内の温度は上昇と下降を繰り返している。

昨夏(2018年8月10日)、筆者らは埼玉県・森林公園ゴルフ倶楽部で、ゴルフプレー中の帽子内温度の変化について検証した。当日の天候は晴れ、最高気温36.9度、湿度55%、WBGT28.5~34.2であった。2名の被験者の帽子内に計測器を設置し、9ホールプレー中の帽子内温度を15秒おきに測定した。

画像: 帽子内に計測器を設置して9ホールプレー中の帽子内温度を15秒おきに測定

帽子内に計測器を設置して9ホールプレー中の帽子内温度を15秒おきに測定

被験者Aは「一般的なゴルフキャップ」を着用し、被験者Bは「高通気性キャップ」を着用して実験を行った。その結果、図のような帽子内温度変化が見られた。

注目して頂きたいのが、緑のマルで囲んだ部分。ここはグリーン上でのパッティング中であるが、要するに、温度が急上昇してグラフが突起状になっている。

画像: 2名の被験者の帽子内に計測器を設置し、9ホールプレー中の帽子内温度を測定した結果、暑熱環境下で長時間に渡り被り続けると、帽子内温度は上昇し熱中症リスクが高まることがわかった

2名の被験者の帽子内に計測器を設置し、9ホールプレー中の帽子内温度を測定した結果、暑熱環境下で長時間に渡り被り続けると、帽子内温度は上昇し熱中症リスクが高まることがわかった

グリーン上で帽子内温度が急上昇する理由として、

●周辺に木陰が少ない
●ショットに比べ時間をかけてプレーすることが多い
●立ち止まって同伴者のプレーを見ている時間が長い

などの理由が考えられる。

グリーン上では少なくとも1回は帽子を被り直そう

図のように、この実験において、帽子の形状はどうあれ、帽子内温度はほぼ同じパターンで上下していた。ちなみに、高通気性キャップを使用群は、9ホールラウンド中の平均温度はマイナス2.9度であった。

この検証ではラウンド中は脱帽しないことを実験条件としたが、帽子を暑熱環境下で長時間に渡り被り続けると、帽子内温度は上昇し熱中症リスクが高まる。

暑熱環境下でのゴルフプレーの際、特にパッティング前後に留意すべきこととして、

画像: 熱中症対策としてグリーン上では一度帽子を被り直そう

熱中症対策としてグリーン上では一度帽子を被り直そう

●グリーンでのプレー前後にはこまめに水分や塩分を補給する
●パッティング前やグリーン上では少なくとも1回は帽子を被り直して通気する

ことを是非実践して頂きたい。

どんな帽子を被るかの選択も重要

この実験において、帽子の形状を選択することによって、8月の猛暑のプレー時でも、帽子内温度が約3度程度涼しくなることも明らかとなっているので「どんな帽子を被るかの選択」も重要だろう。

今回、実験に使用した高通気性キャップ(Airpeak,ビルマテル株式会社製)は、立ち止まっていることが多いゴルフのラウンド中でも、一般的なゴルフキャップと比較して、マイナス約3度の涼しさを保っていた。たとえば、街歩き等での着帽ではもっと涼しさに差が出るのかもしれない。

<参考文献>
・北 徹朗ら(2018)帽子(キャップ)の形状の違いがゴルフプレー中の帽体内温度変化に及ぼす影響に関する一考察、ゴルフの科学Vol.30

・Kita, T et al(2019)THE INFLUENCE OF A DIFFERENCE IN THE SHAPEOF A HAT ON THE TEMPERATURE INSIDE IT DURING THE PLAY OF GOLF、16th Annual Scientifi c Conference ofMontenegrin Sports Academy “Sport, Physical Activity and Health: ContemporaryPerspectives”  BOOK OF ABSTRACTS、pp.87-88

※一部訂正致しました(2019.05.30 17:00)

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