試打したのは、三菱ケミカル「テンセイCKプロオレンジ」、フジクラシャフト「スピーダーSLK」、「デイトナスピーダー」、TPPX「アフターバーナー」、シンカグラファイト「ループプロトタイプLT」、グラファイトデザイン「秩父」、日本シャフトの「NSプロ レジオフォーミュラBプラス」「NSプロ レジオフォーミュラMプラス」の計8モデル。
それらを「コブラF9」のヘッドに差し、プロゴルファーの中村修と堀口宣篤の2名がテストを行った。なお、フレックスは基本的にS。シャフト重量や長さは、シャフトの特徴が出るように臨機応変に組んである。飛距離等も計測したが、シャフトは合う・合わないの見極めこそが重要であり、スペックもシャフトごとに異なるため、あくまでも参考値とした。
さて、8モデルを打ち終えた中村に、まずは全体の傾向を聞いた。
「なかなかシャフトだけを打ち比べる機会はありませんが、いっぺんに打つとやはり面白いですね。各メーカーそれぞれ知恵を絞り、それぞれ異なる“飛ばし方”を提案しています。そして、基本的には今のヘッド、すなわち高慣性モーメントのヘッドに合うシャフトになっています」
ピンのG400MAXに代表されるような高慣性モーメントヘッドは、フェースの開閉が起きにくく、クラブをシャットに保ったまま振ったほうが良い結果を得やすいとされる。そのため、フェースターンを促すというよりも、フェースをスクェアに保ったまま振り切れる、そんな傾向が全体的に見られるという。
「中でも、今回試打した8モデルは3パターンに分類できます」と中村。
・しなりの大きい弾きタイプ
・振りやすさを独自に追求したタイプ
・素直な挙動のタイプ
の3つだ。そのうちの最多ボリュームを占めるのが、「秩父」「デイトナスピーダー」「アフターバーナー」そして「ループプロトタイプLT」の“しなりの大きい弾きタイプ”4モデル。中間あるいは先寄りがしなり、ボールを弾いてくれるシャフト群だ。
「明確に飛ばしを目的としたシャフトがこの4つです。ヘッドスピードを上げてくれ、それによりボール初速を高め、飛ばせる。デイトナスピーダー、秩父、アフタバーナーはとくに先が走るタイプ。ループはそれらに比べるとクセなくしなる印象です」(中村)
個別の評価を簡単にするならば、「秩父」は今回試打した中でもっとも軽く(Sで44g)、もっとも軟らかいシャフト。「ただし、頼りない感じはなく、スピード感も落ちない」と堀口が評するように、ヘッドスピードがさほど速くないゴルファーが振ったときに、しっかりと振り切れる性能を持っている。
TRPXのアフターバーナーはSで51gと軽量で「とにかく走ってくる」(堀口)「飛び系の良いところを感じる、つかまって高さを出せるシャフト」(中村)と高評価。
同じく50g台(Sで59グラム)のシンカグラファイト「ループ プロトタイプLT」は、弾き系のタイプの中ではオーソドックスに振れるタイプ。「スムーズに振れて、インパクト直前に走ってきて、ボールを押し込んでくれる。球が非常に強い」と堀口が評せば、中村も「ヘッドスピード40m/sくらいから、幅広い人にフィットするシャフト」とクセの少ない走りを評価していた。
このカテゴリの掉尾を飾るフジクラの「デイトナスピーダー」。Sシャフトの重量は61グラムとこのカテゴリでは最重量となったが、「すごく強い球が出る。自分でコントロールしていけます」(堀口)「しっかりしなって球を押してくれる。つかまり過ぎないのもいいですね」(中村)と評価。
紹介した順に重量が増していくため、自分のヘッドスピードに合わせて、適切なモデルを選ぶと良さそう。
ちなみに、ヘッドスピード40m/sのイメージで試打をした中村がもっとも飛距離を稼いだのがアフターバーナー。252ヤードという飛距離が出た。
短尺で飛ばすSLK。カウンターバランスが特徴の「テンセイCKプロ オレンジ」
さて、次のパターンは、「振りやすさ」に工夫が凝らされた2モデルだ。このカテゴリには「スピーダーSLK」と「テンセイCKプロ オレンジ」が入る。
「どちらもタイプとしてはまったく異なるのですが、SLKは先が重たい短尺シャフト、テンセイは逆に手元が重いシャフトです。SLKは短いことで振りやすく、テンセイはカウンターバランスにすることでヘッドバランスを軽くし、それによって振りやすさを演出しています」(中村)
リッキー・ファウラーが43.5インチの短尺クラブを愛用しているのは有名だが、SLKはリッキーと同じ43.5インチで組んでみた。重さは60グラム台、硬さはSフレックスだ。
「43.5インチというと3番ウッドと同じ長さです。その長さでドライバーを振ると、大型ヘッドがよりやさしく、“当たりやすく”感じられます。その安心感からもっと振り切ることができるのでスピードが上がり、とくにアマチュアの方には良い相乗効果があると思います」(中村)
テンセイは調子でいえば手元調子で、どちらかというとプロ好みのシャフト。実際、もう一人の試打者である堀口はテンセイが一番飛んだ。
「292ヤードと、普段よりはるかに飛んでしまいました。手元重心でヘッドが軽く感じるようになった分、ヘッドスピードを上げて振り抜けることで、飛距離が出せましたね」(堀口)
クセのないしなりが魅力の「NSプロ レジオフォーミュラ 」
最後に、もっともオーソドックスなのが日本シャフトの2本。「NSプロ レジオフォーミュラBプラス」と「NSプロ レジオフォーミュラMプラス」の2本だ。この2本、専門家筋からの評価が非常に高い。
試打スペックはそれぞれ65の硬さS。カタログスペックでいうと、Bプラスが66.5グラム、Sプラスが67グラムだ。
「どちらも非常に素直なシャフトで、Bプラスは手元調子、Mプラスは中調子です。私はもともと手元調子が好きなので、Bプラスが非常によく合いました」(中村)
「Mプラスのほうは走り感が非常にあります。切り返し以降シャフトが加速してヘッドを走らせてくれるイメージです」(堀口)
軽量、長尺、短尺、カウンターバランスと、個性が際立ってきた最近のシャフトにあって、高品質な素材を用いて“王道”ともいえる性能を追求しているのがレジオフォーミュラシリーズと言えそう。とくに最近の大型で慣性モーメントの大きい低スピンヘッドとの相性が良さそう。また、最近人気の「モーダス3シャフト」との相性の良さも見逃せない点だ。
スウィングが十人十色である以上、万人にベストなシャフトは存在しない。スウィングとマッチングした場合に、シャフトは初めてその性能を100%活かすことができるからだ。今回の試打企画を参考に、「これ、自分に合いそうかも?」というシャフトを見つけたら、ぜひ、機会を見つけて試打してみよう。
協力:PGST