「アンダーパーを出したかった」
第二の人生をプロゴルファーとして歩みたいと願うアスリートは多い。かつて巨人のエースだった西本聖然り。真剣にシニアツアー挑戦を考えた時期があったようだが現実は厳しく目標には手が届かなかった。
その夢を叶えつつあるアスリートがいる。メジャーリーグのエンゼルスやマリナーズで投手として活躍した長谷川だ。
野球選手、特に投手はゴルフが上手いといわれているが、長谷川がゴルフをはじめたのは23歳。あっという間にのめり込み登板のある日もない日もゴルフに興じ、7年前から真剣に取り組み今年の5月ついに米チャンピオンズ(シニア)ツアーの三菱電機クラシックに主催者推薦で出場するチャンスを得た。
アメリカのシニアツアーはプロ資格がなくても試合に出られる。だがそこで賞金を稼げばアマチュア資格は剥奪される。それを知りつつ「シニアツアーに出たいという気持ちが強かった」という長谷川は「お金(賞金)を貰ってしまったから」とプロ転向を表明した。マスターカードはプロ宣言してから2試合目の参戦だった。
初日こそ「81」を叩いたが厳しいセッティングのなか2日目、最終日は1オーバー73にまとめ「アンダーパーを出したかった」と悔やしさを滲ませつつ挑戦が決して生半可なものではないことを証明して見せた。
日本のシニアツアーに出場するにはプロ資格が必要。さっそく11日から「PGA資格認定プロテスト」を受ける。
それにしても長谷川はなぜプロゴルファーを目指すのか? 本人いわく「この歳(50歳)になってまた緊張感を味わえることがうれしい」。だからプロテストも「なるようになると思って楽しみたい」という。
メジャーでマウンドに立っていたころも最初のうちは緊張したそうだが、次第に緊張感が薄れていった。かつてのドキドキ感を取り戻すため長谷川はティイングエリア(ティグランドといえなくなったのが難だが)に立つ。
日米両シニアツアー出場を目指す彼は11月に米チャンピオンズツアーのQTに挑む。そこはたった5人しかツアーへの切符を手にすることができない狭き門。楽しいを通り越した極限の戦いになるはずだが「いい感じでいければいい」と達観している。
マスターカードに出場していたレジェンド、トム・ワトソンは長谷川に「ゴルフを愛して欲しい。そして最後まで諦めないで!」というメッセージを贈った。「ネバーサレンダー(降参するな!)」と付け加えたワトソンは片目をつぶった。