フェースを開かず、腕を曲げずにバックスウィング
フェアウェイが狭く、ラフも深く、グリーンは速い。ドライバーからパットまですべてのクラブでの高い技術に加え、我慢強いメンタル、スコアを守るマネジメントに至るまで、「ツアー選手権」のセッティングは、すべてにおいて高い水準を求められるものでした。
そんな難しいセッティングの中、堀川未来夢選手は初日の出だしから6連続バーディで首位発進すると、4日間を通していいショット、いいパットを打ち続け、見事に初優勝へとつなげました。
優勝請負人と呼ばれる清水重憲キャディのマネジメントや手綱さばきが功を奏したこともありますが、実際にショットを打つのは堀川選手自身。ツアー選手権のプロアマで撮影したその最新のスウィングを見てみましょう。
特徴的なのは両腕を伸ばしたままでフェースをボールに向けたまま上げるテークバックです(写真A左)。コックを使わないことで、手先で上げずにしっかりと深いバックスウィングになります。トップは手元が低いフラットな位置に収まっており(写真A右)、フェースが空を向くシャットフェースになっています。
切り返しでは後方の画像を見てみます。トップの位置は低くフラットでシャフトの向きはターゲットよりも左を差すレイドオフです(写真B左)。そして下半身から切り返すと、シャフトは右肩よりも低い位置から下りてきています(写真B右)。
右肩よりも高い位置から下りて来るようだと入射角が鋭角で、カット軌道が強い証拠。逆にシャフトが低い位置に下りてきても、シャフトが寝すぎて手元が浮くとインサイドアウトが強すぎるということになります。堀川選手の場合、低い位置から下りてきて、手元も浮いていません。それだけ浅い入射角で正確にインパクトできることがわかります。
また、シャットに上げたことで、ダウンスウィングの早い段階でクラブフェースがボールのほうを向いていることもわかります。フェースローテーションの少ない、方向性に優れたスウィングです。
インパクト前後の画像(写真C)を見てみると、ボールに対して浅い入射角で入り、ゆるやかなアッパー軌道でボールをとらえていることがわかります。
ダウンスウィングの早い段階でフェース面がボールを向くので、フェースローテーションも少なく方向性に優れている一方、飛距離を出すためにはしっかりと下半身からの力を回転に変え、スピードを出す必要がありますが、体を鍛えることで方向性と飛距離を両立させているのでしょう。
2015年のデビュー以来、見るたびに増量しプロの体になってきました。地道な努力で鍛えた体と方向性のいいスウィングによる安定感のあるショット力。そこに、自分に余計なプレッシャーをかけないコースマネジメントが加わったことで、今回の初優勝につながったのでしょう。
また、グローブをしないことは手の感覚に敏感であるとも言えます。脳は体の部位の中で手の感覚が非常に大きな割合を占めると言いますのでグローブをしないことでクラブとの一体感や操作する感覚を大切にしているのだと思います。
昨年の賞金王である今平周吾と同じ26歳、今週はペブルビーチGLで開催される「全米オープン」に予選を勝ち上がって出場します。初の海外メジャーで多くを学び、残りのシーズンも大暴れしてくれることでしょう。