スタートホールはちょっとした「お祭り状態」だった
ようやく堀川未来夢選手が優勝しました。
昨年のツアー最終戦日本シリーズ。18番ホールで、先にホールアウトした小平智選手たちに追いつくため執念のパーパットを放ち、外し、無念にも敗れた記憶が呼び起こされました。
その時はその心意気や良し、と思ったものでした。あれから半年。
2019年6月9日、「ツアー選手権」最終日。世間的にはロック(69)の日。早朝の天気予報は夕方から雨。前日の土曜日は、予選ラウンドの残りを消化するサスペンデッドの影響もあり、3サム2ウェイ(3人1組で、OUT/INコース両方からスタート)で、最終日は本来の進行方法の3サムワンウェイでした。
堀川選手の初日からの組み合わせは堀川・尾崎将司・崔虎星。初日にジャンボさん、2日目に虎さんが棄権し、土曜日早朝のサスペンデッドは、一人で13番からラウンドしていました。
この宍戸ヒルズCCは、先月の海外メジャー「全米プロ」開催コースのベスページブラック同様、前半の9番ホールでクラブハウスあたりに帰る事が無い、出たら最後の“行って来いコース”です。
故に、スタート前にそれ用の撮影戦略を立てます。前日の週刊ゴルフダイジェスト編集部との打ち合わせで、前半は堀川を始めとした最終組をマークし、他に飛び出した選手がいれば適時対応する堀川優勝パターンを想定したシフト。
で、最近ではあまり撮らなくなった、スタートホールで流し撮影。流し撮影とはいえ、少し収穫がありました。
ティアップするまでの短い時間に選手や青木功日本ゴルフツアー機構会長が、観客に自分のボールを渡したり、子供たちにはボールマーカーをあげたり、来場への感謝を伝えちょっとしたお祭りの様子。私のすぐそばにいた観客のご婦人は「手渡しなんてホント嬉しい!」と感激しきり。
そして最終組登場。堀川未来夢、今平周吾、ガン・チャルングン、1992年生まれ、同い年3人が最終組。実績十分貫禄の今平。直ドラ名人のチャルングン。素手グリップの堀川。私の中の3人のイメージです。
ひとまず4番ホールまでこの最終組に付きます。5番ティショットの後は、その隣の6番グリーンへ。
ここで先をゆく組の、イーグル狙いに入ります。
とは言え、中々そうしたシーンはありません。が、イーグルはゴルフの華! と疑わない私は、それを求めて狙います。で、ここでの収穫ゼロ。
さらに、長い橋を渡って向かう7、8、9番には行かずに10番ティで先行する組を撮りながら最終組を待ちます。ここにはリーダーズボードがあって、スマホを開かなくても動向がわかります。
と、あれ! チャン・キムが前半6アンダーで、後半も伸ばしています。今日の逆転優勝想定は、最大3アンダースタートまでと仮定してました。このスコアなら、12アンダーからスタートしたトーナメントリーダーの堀川が仮にイーブンで最終日を終えたとしても、並ぶのに9アンダーが必要になります。
チャン・キムは1アンダースタートなので逆転には11アンダーが必要ですが……とはいえ、ムム、要注意です。
先行するプレーヤーを気にしつつも、10番から再び最終組をマーク。じわり今平が追ってきます。
堀川の懸念は15番パー5のティショットです。昨日はここのティショットを左の17番ラフまで曲げて往生してました。今日はそこを切り抜ければ、優勝がグッと近づくのでは。
で、ティショットです。おっ! 手にしたのはドライバーではない。3Wかな? がっちりディフェンシブな攻めか。球は右ラフにいった様子。急ぎセカンド地点へ行き、第2打を待ちます。
まだグリーンでは前の組の星野陸也、池村寛世、ジャズ・ジェーンワタナノンド組がプレー中。堀川は完全に2オンを狙わない状況と判断も早く、セカンドショットを放ちました。あとの2人はグリーン空き待ちです。気持ちは堀川の第3打に向かいたいのですが、まだまだ今平のセカンドショットを見逃すこともできません。
グリーンが空きました。まずはチャルングン。おっ、ドライバーを手にしてる。私の好物の直ドラです。そして彼は直ドラ名人。これを撮らない訳には行きません。打ちました……歓声から2オンは成らずの様子。次は今平です。攻めの気持ちが物静かな男からビシビシ伝わってきます。
ビシッ! 良い音から放たれた球は‥遠くグリーンから歓声が聞こえます。2オン成功の模様。このホールを今平は見事イーグルで堀川に圧をかけますが、堀川は3オンしたバーディパットを決め返して、今平の圧を跳ね返しました。お見事!
17番は長いパーパットが入らずボギーとしたものの、もうビクトリーロードをゴールテープに向かって歩むだけの状況です。賞金王も直ドラ名人も堀川の優勝介添人です。18番ティショットはフェアウェイ右に、そこからグリーンをとらえ2パットのパー。相手を寄せ付けない、横綱相撲のような初優勝。
本人は、手が震え足が震えのラウンドだったと最終日を振り返っていましたが、私にはまったくそうした気配は感じられませんでした。堀川プロ、優勝おめでとう。この勢いで全米オープンを戦ってきて!
そして清水重憲キャディ、折々に垣間見たナイスサポート、感服しました。