初めてのツアーバン取材に感動していると「試しにやってみませんか?」の声が!?
トーナメント会場には、契約選手のクラブを調整するメーカーのバス、通称「ツアーバン」が来ている。私・新人編集者A子は、今週開催される女子ツアー「ニチレイレディス」の会場でテーラーメイドのツアーバス内部を初取材した。
内部は本格的なゴルフ工房になっており、パターのライ角調整にシャフト交換など、選手に合わせてクラブを調整していく姿は「ギアのクリニック」のよう。
実は、以前自分のドライバーのシャフトカットやライ角調整を依頼したときから“クラフトマン”に憧れを持っていた。自分でもやってみたい……でも自分は「超」がつくほどの不器用……。クラフトマンの見事な手さばきを憧れ全開で見ていると、「そんなに興味があるのなら、一度試しにやってみますか?」とまさかの声が。
こんなチャンスは滅多にない!と、翌日マイアイアン(PW~5I、計6本)のグリップ交換を体験させてもらうことに。取材に来て良かった……!
教えてくれたのは、テーラーメイドのツアー担当でクラフトマンの竹内信弘さん。ツアーバンに持ち込まれる選手たちからの依頼をスピーディに、とても丁寧にこなす、惚れ惚れする技術の持ち主だ。
さて竹内さんに教えてもらいながら始まったグリップ交換。まずは今ついているグリップを剥がすところからスタート。カーボンシャフトを傷付けないようにカッターでカットしていき、あとは剥がす!
簡単簡単! と思いきや……はっ、剥がれない!半分くらいは剥がせても、そこから先がビクともしない。
「ある程度剥がれたら足で剥がしていいですよ」(竹内さん)
ということで足を使ってなんとかグリップを取ることに成功。達成感を味わっていると、私が
1本剥がす間に竹内さんは残り5本の作業を終了。すごいスピード、まさに神業だ。
グリップが剥がせたら、シャフトに貼られたグリップとシャフトを接着させるテープをドラ
イヤーの熱で温めて剥がし、また同じようにテープを貼っていく作業だ。
「新しく差すグリップの長さを確認し、グリップ内部に収まるようにテープを重ねずに斜めに均等に巻いていってください」と竹内さん。クルクルクルッといともたやすく巻いていく。私もなんとか(
微妙にテープとテープの間に隙間がありつつも)テープを貼ることに成功。
ここからはついに新しいグリップを差していく作業。クラブをスクェアに固定して、ベンジン(溶剤)を使って装着していく。
「クラブを固定したら、ベンジンをグリップの中にいれて、まんべんなく溶液が行き渡るようにします。そして、シャフトにも溶液をかけてください。最後に『スッスー』とグリップを装着すれば完成です」(竹内さん)
溶液でシャフトに巻いたテープの接着力が高まっている間の、速さが勝負なこの工程、本当に難しい!
モタモタしていると、グリップが半分しか差さらない! なんてことに。
「スッスッー」というわけにはいかず、半分しか差さらない状況を3回ほど繰り返し(竹内さん、本当にすみません)、ようやくグリップ差すことに成功!
竹内さんにねじれたグリップなどは修正してもらい、自分の手で6本すべてを差し終えることができた。
「慣れれば簡単ですよ」と竹内さんは言うが、とんでもない。グリップを剥がして差すだけでも大変なのに、これを一人一人のプロの好みに合わせてやるなんて……改めて、クラフトマンの技術に感動を覚える。
これで私のアイアンショットもプロ並みになる……わけがないが、使い古した自分のアイアンに、より一層愛着が湧いたのはたしかだ。竹内さんはじめテーラーメイドのみなさん、お世話になりました!
取材大会/ニチレイレディス 撮影/矢田部裕