豪州勢のメジャー制覇は2006年にカリー・ウェブがクラフトナビスコ(現ANAインスピレーション)に勝って以来13年ぶり。そしてウェブとグリーンには固い絆と知られざる秘話があった。
4年前、ハンナ・グリーンはウェブの招待でメジャーを“観戦”していた
バンカーからシビアなパーをセーブし完全優勝を飾った瞬間、オーストラリアの同僚が国旗を振ってウォーターシャワーでグリーンを出迎えた。そのなかにはツアープロであるボーイフレンド、ジャリッド・フェントンさんの姿もあった。
「言葉がありません。最後はすごく緊張しました」と涙したグリーンは「オージーの人々の前で優勝したいと思っていました。その思いを皆が叶えてくれた。月にも上る気分です」と喜びを表現した。
思えば4年前、無名のアマチュアだったグリーンは母国のレジェンド、カリー・ウェブが主宰する大会で好成績をマークしウェブが出場する全米女子オープンを観戦に訪れていた。
カリー・ウェブシリーズと銘打った一連の大会(年間10から12試合)で上位に入った2名を毎年ウェブはメジャー大会に招待している。渡航費用はもちろんウェブの負担。2015年にはグリーンがチャンスを掴み最高峰のメジャーで戦うホール・オブ・フェーマー(殿堂入りプレーヤー)の姿をつぶさにその瞳に刻み込んだ。
それだけではない。大会期間中はウェブが借りた家に一緒に泊まり、コース以外でのレジェンドの姿を目の当たりにしたのだ。
「ゴルフへの向き合い方を変えてくれたすごく貴重な経験でした」とグリーン。これはウェブが憧れのグレッグ・ノーマンから受け継いだジュニア育成術。ウェブ自身もかつてノーマン主宰のアマチュアの大会で好成績を残しカリスマの自宅(フロリダ)に招待され、宿泊して近くで開催された試合を観戦し自らの将来に活かした経緯がある。
「4年前ロープの外から見ているだけだった有名選手といまは同じ舞台で戦っている。信じられない気分です」(グリーン)
あいにくウェブは予選で大会から姿を消したが首位を走る後輩に「素晴らしいプレーをしている。私は彼女たち(ウェブシリーズの卒業生)の一番のチアリーダー」と健闘を祈っていた。
グリーンが2年前下部ツアーでプロ初優勝したとき真っ先にお祝いメールを送ってくれたのもウェブだった。しかもそのときはグリーンがアメリカ、ウェブがオーストラリアにおり12時間の時差があったにもかかわらずいの一番に祝福したというのだ。さすがは一番のチアリーダーである。
ウェブが撒いた種が大輪の花を咲かせた今年のメジャー第3戦。ここのところ米女子ツアーではメジャーごとに違うチャンピオンが誕生している。絶対王者がいない時代、次に勝利をものにするのは誰だ?