「ニチレイレディス」で鈴木愛とプレーオフを戦い、惜しくも敗れた高橋彩華(さやか)。今シーズンは開幕から9戦で予選通過は1度だけと苦しみながら、ここにきて調子を上げてきた。優勝もすぐそこと思える戦いぶりを見せる高橋のスウィングを、プロゴルファー・中村修が分析した。

もともと良かったショットに、パットが噛み合ってきた

6試合連続で予選落ちが続く中、5月のパナソニックオープンで話を聞いたときには、「ショットはかなり改善していて、あとはパットなんです」と語ってくれていた高橋彩華選手。

パーオンしてもパットが入らず、そこから崩れるのが今季の彼女の悪いパターン。そこで、3Dモーションキャプチャー「ギアーズ」の使い手で、昨年の一ノ瀬優希選手の復活シードを手助けした奥嶋誠昭コーチに師事したところパッティングの数値が劇的に向上したと言います。

奥嶋コーチに話を聞くと「パッティングのルーティンや狙い方を整理したことで、狙ったところに打てるようになりました」という答えが返ってきました。打つたびにマチマチだったというルーティンをつねに一定のものにしたことで、パッティングが改善。もともと良かったショットと噛み合ってきたことが、ここ数試合の好結果につながっているようです。

画像: 「ニチレイレディス」ではプレーオフに残った高橋彩華(写真は2019年のワールドレディスチャンピオンサロンパスカップ)

「ニチレイレディス」ではプレーオフに残った高橋彩華(写真は2019年のワールドレディスチャンピオンサロンパスカップ)

「ニチレイレディス」での平均飛距離は246.5ヤードと必要にして十分。スウィング(画像A)を見てみると、バックスウィングとダウンスウィングで腕とクラブの作る角度にあまり差がありません。手首のタメを大きく作り、一気にリリースすることで飛距離を出すタイプではなく、しっかりと体の回転で飛距離を出していくタイプであることの証拠。

画像: 画像A:バックスウィングとダウンスウィングで腕とクラブの作る角度にあまり差がない。体の回転で飛距離を出すタイプの高橋彩華(写真は2019年のリゾートトラストレディス 撮影/小林司)

画像A:バックスウィングとダウンスウィングで腕とクラブの作る角度にあまり差がない。体の回転で飛距離を出すタイプの高橋彩華(写真は2019年のリゾートトラストレディス 撮影/小林司)

ダウンスウィングとフォローを並べた画像(B)を見ると、スウィング中に肩のラインが大きく回転していることが見てとれます。

ポイントは肩のラインが横回転ではなく、どちらかというと縦方向の回転をしているところです。下半身を先行させながら肩のラインを縦方向に回すように使うと右肩が突っ込まなくなり、クラブの軌道もボールに対してインサイドから入りやすくなります。現在フェアウェイキープ率15位という正確性も頷けます。

画像: 画像B:ダウンスウィングからインパクトで肩のラインが大きく回転していることがわかる(写真は2019年のリゾートトラストレディス 撮影/小林司)

画像B:ダウンスウィングからインパクトで肩のラインが大きく回転していることがわかる(写真は2019年のリゾートトラストレディス 撮影/小林司)

もともと質の高いスウィングに加え、パッティングが改善されたことで大いに初優勝への期待が高まる高橋選手。

プレーオフの末敗れたニチレイレディス最終日でも、鈴木愛、比嘉真美子両選手という女子ツアーの双璧ともいうべき実力者に挟まれながらプレッシャーで崩れることなく、プレーオフまで食らいついたのはむしろ賞賛に値するものでしたが、母親の真由美さんに話を聞くと、「もともと耐えるゴルフが得意」なのだと教えてくれました。

「彩華が話していたことで、難しいコースでもやさしいコースでも平(たいら、パープレーの意)になるんだと。もともとバーディ合戦よりは耐えるゴルフのほうが得意なんです。でも、今回パットが入るようになってバーディも増えてきましたので、自信にもなっていると思います。(今までは)連続バーディをなかなか取れる選手ではなかったのですが……」(真由美さん)

「耐えるゴルフが得意」だからこそ、初めての優勝争いでも崩れることなく、最後まで元賞金女王の鈴木愛選手を苦しめる展開となったようです。

つい先日まで、シーズン中盤以降試合に出られるかどうかの心配をしていたであろう高橋選手ですが、ほんの2カ月弱の間に初シード、初優勝までが視界に入ってきました。現在ハタチの高橋選手ですが、若い選手はこのように急激に伸びる時期があるから目が離せません。

どこまで強くなっていくのか、引き続き注目していきたいと思います。

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