日本のジュニアゴルフ界の問題点は「遊べないこと」!?
私は仕事の関係でとくにアメリカとの行き来が多く、どうしてもアメリカのジュニアゴルフ界と日本との違いについて感じてしまうことが多くあります。批判的になろうというわけでもないですし、文化や価値観が違うなかで単純に比較できないことも承知していますが、ゴルフを愛好し、ゴルフ界の今後を憂いている一人として、今回はジュニアゴルフ界について書かせていただきたいと思います。
日本におけるジュニアゴルフの問題点。それはゴルフが「遊び」に落とせていないということです。世界的に見ても日本のジュニアゴルファーのレベルは非常に高いと言えます。先日行われたトヨタジュニアゴルフワールドカップでも団体競技で女子が優勝、男子が準優勝の成績を収めるなどその事実が裏付けています。
女子は宮里藍、男子は石川遼を筆頭に高校在学中からプロゴルフ界で頭角を現し、20歳を迎えるころには1人前のツアープロになる、新時代のゴールデンルートが確立されました。そしてそれに続くようにして次世代のジュニアたちは中学・高校時代からどんどん腕を伸ばし、プロツアーを下から押し上げてきています。
しかし、明るい一面とは裏腹にこのジュニアゴルフ界にもある問題が深刻化しています。それはジュニアゴルファー人口の減少です。これほどまでに若手世代が活躍しスポットライトを浴びる中、なぜ人口が減少しているのでしょうか?
そこには日本ゴルフ界が長年にわたって抱える2つの問題点があると考えています。ひとつは物理的な環境、もうひとつは社会的価値観の問題です。
まずは物理的環境です。たとえばサッカーだったら家の近くの公園で友達や兄弟とボール遊びをするところから始まり、所属する小学校でクラブ活動。さらにはレベルアップをしたければ地域のクラブチームに入る、など取り組むレベルごとに異なる環境が用意されています。また、それぞれの環境(グラウンドなど)へのアクセスが、ある程度子ども本人でできることも大きいでしょう。
それに比べてゴルフの場合は、パターゴルフか打ちっぱなしに親と行くところに始まり、そこから先は実際のコースかショートコースに行くほかありません。もちろんすべて親による送り迎えがある前提となります。
ゴルフコースはジュニア利用料金が設定されていても、ジュニアのみでのプレーについては受け入れていないことが多く、結局は親が同伴しなければならないことが大半となります。となると、ここまで時間と労力をかけるのなら、親からすれば「ちゃんとやりなさい!」となってしまうのも仕方のないこと。これが遊びではなく本気ゴルフの始まりです。
米国では父の日のギフトとして、ゴルフ場総合予約サイトからプレーの予約を促すテレビコマーシャルが放送されていました。そしてプレー当日は子どもと親が休日にゴルフを楽しむ姿が映像として流れていました。
私は日本で子供がゴルフをプレーしているテレビコマーシャルはいまだ1度も見たことはありません。米国でこのコマーシャルを目にするまで気にしたことはありませんでしたが、一度気づいてしまうと、いかに日本では子供がゴルフをすることに対して嫌悪感にも似た、なにがしかの見られ方があると感じざるを得ません。それが社会的価値観です。
冒頭でお話した通り、何も米国と比較することで日本がダメと批判する気もないし、物理的環境はどうしようもない部分はありまが、日本ではジュニアに対して何かしらの偏見の目で見ていることは確かでしょう。
ただ、ゴルフの本質、広く言えばスポーツの本質とは楽しむことや責任をもって何か成し遂げることの積み重ねです。そういう意味においては必ずしも本物のクラブ、本物のコースから始める必要はありません。ゴルフに通ずるようなスポーツ体験をできればよいのです。
たとえば都内の辰巳の森海浜公園にあるようなパターゴルフ場や、グラウンドゴルフを行える施設。スナッグゴルフが簡易的に楽しむことができる週末開放される学校など、手軽に遊べる環境を作っていく努力が必要なのではないでしょうか。
一般的にサラリーマンといわれる職種の人たちも言い方を変えれば「プロ」サラリーマン。では、子供のころからプロサラリーマンを目指していたか? というとそんなはずはありません。ゴルフもそれと同様、何もゴールはいつも「プロ」でなくたって良いはずです。
ゴルフを遊びに落としていく。それがジュニアゴルフ人口の減少を防ぐためにも、大切なのではないでしょうか。