ティグラウンドの風だけでなく“立体的”に風を読む
井上:今回のテーマは「風ってどうしてる?」です。実際にコースに来ると、風が吹いている場合がほとんどでしょ?
幡野:そうですね。やめばいいのに。
井上:「私のときだけやめばいいのに」って? しょうがないな。普段は風の読みってどうしてる?
幡野:普段? 風まかせ。
井上:風まかせ、じゃないよ(笑)。まずはアプリで天気を調べるところから。朝起きて天気予報を調べるよね。
幡野:私はウェザーニュースで調べてます。湿度がいっぱいだとお肌が乾燥しないから「今日はいいなあ~」って。
井上:あのさあ……(絶句)。ヤーデージブックでコースの情報を確認するし、天気予報もチェックするけど、それよりも実際にコースに来た時の情報のほうが遥かに重要だよね。天気予報っていうのは外れる可能性もあるわけで。じゃあ「コース来たときどうするの?」っていったら、まず雲の流れを見ます。
幡野:あぁ見てください、良い雲ですね。
井上:今は左から右、フォローの方向に動いています。そしたら今度は下、地面付近ではどう吹いているか。フェアウェイにフラッグが立っているので、どちらになびいているのかを見る。すると、左から右だよね。若干アゲンストかな。
幡野:10時の方向から吹いてますね。
井上:それと、ボールが上がる高さくらいで吹いている風も見ておきたい。木の高さくらいでいいかな。だいたい女子プロだと20~25ヤード、男子プロだと30ヤードくらいボールが上がるので、木の先端部がどっちからどっちに動いているかを確認する。この3点を見れば、おおよそ良いと思います。
さらに、自分が今立っている地点、狙っている場所との中間地点、ボールが落下した後のランディングエリアで吹いている風も見ておくとより良いです。場所ごとに風の強さや吹く方向が違うから、ショットに関わる空間全部を把握しなきゃいけないわけ。
幡野:なるほど。ふむふむ(芝を少し抜き、手元から離して風を読む)。顔に芝がかかりました。
井上:(笑)。このティイングエリアは左からのアゲンスト。そして上空は左からのフォロー、ランディングエリアは左から右に真横からわずかにアゲンストかも。つまり、全体的に左から吹いてるけどエリアによってフォローになったりアゲンストになったりしてるよね。
幡野:たしかに。
井上:ということは、たとえばフラッグの辺りに落とそうと思ったら、風を考慮してちょっと左を狙う、とかね。……そういうことだよね?
幡野:そういうことです!
井上:じゃあ実際に打ってみようか。
幡野:(ドライバーを持ち)低い球の方がいいんですか? あ、でも打てないわ低い球なんて。
井上:このくらいの風なら、低い球はいらないかな。
幡野:ハーイ。
――カキーン(打球音)
幡野:アァ~~~~~!(いいボールだが、若干狙いよりも左へ)
井上:いいパワーボール。狙った地点より少し左に落ちてしまったね。実は左からの横風って、風の種類の中でも一番プロが嫌がるんだよね。
幡野:へぇ〜、そうなんだ。
井上:右利きの選手だと右に出して球をつかまえる、ドローのイメージが湧きやすいから、右からの風のほうが多くのプロは簡単だって感じてると思います。逆に左からのサイドアゲンストとかは、コントロールが結構難しい。
幡野:たしかに引っかけがちですね。
井上:そうそう。だからまずは、左からの風、左からのサイドアゲンストが克服できれば、かなり風に対しての適応力は増してくるのかなと。
幡野:うんうん。
井上:ちなみに、今この左からの風が吹く中で、夏生はつかまえて狙った場所よりも左にズレてるんだけど、決して悪いミスじゃない。一番やっちゃいけないのは……。
幡野:右ペラ?
井上:そう。右に打って風に乗ってしまうこと。風に乗っちゃうとどこまででも曲がっていってしまうからね。だから、今のはミスなんだけど、質の良いミスと言えるよね。
幡野:ということで、次のショット地点に行きましょ~。さよ~なら~!
協力/きみさらずゴルフリンクス