再現性が高いから、シビれる場面でしっかり振れる
ツアー初優勝を挙げた5月の「サロンパスカップ」のときにも感じましたが、渋野選手の素晴らしいところは、プレッシャーのかかった場面でもしっかりと振り抜ける思い切りの良さ。
「ソフトボールで鍛えた体の強さもありますが、思い切ってズバッと振れる、それができるのが渋野の強み」と以前青木翔コーチに話を聞いたときに、そう彼女の良さを教えてくれましたが、勝負どころで“ズバッと”振れるのは、スウィング自体の質の高さが根底にあるのは間違いありません。
ではそのズバッと振れるスウィングを見てみましょう。ぜひ見ていただきたいのは、切り返しからダウンスウィングにかけて。まず切り返しですが、左手首が手のひら側に折れる“掌屈(しょうくつ)”という動きが入っています。
この動きはフェースを閉じる動き、つまり、ボールをつかまえる動き。ダウンスウィングの手元を見ると、掌屈された左手首の角度がキープされていることがわかります。フェースが開かずにボールへ向かっているのがわかります。
切り返しからフェースの向きをキープしたままインパクトへ向かうことで、フェースはゆるやかにターンすることになります。手を使った急激なフェースターンを防ぎ、体の中心部分の大きな筋肉を使ってスウィングできています。
手の動きが大きいスウィングは安定感に欠け、プレッシャー下で思い切り振り抜くことが難しいものですが、渋野選手の場合、掌屈の動きでフェースを閉じることでボールをつかまえる準備を整え、あとは体を思い切りターンさせることができています。スウィング自体の再現性が高いことが、プレッシャー下でもズバッと振れる秘密です。
また、このような打ち方は、ブルックス・ケプカや、ダスティン・ジョンソンといった当代の一流プロに通ずるもの。現代の慣性モーメントの大きい大型ドライバーとの相性がいいスウィングであることも見逃せない要素と言えます。
グリップの握り方にもよりますが、球がつかまらない人や、フェースをターンさせるタイミングが上手くつかめない人は、トップでの左手首の掌屈を意識してみることをお勧めします。球のつかまりを手の返しに頼る割合が減り、出球の安定感につながるはずです。
昨年プロテストに合格し、レギュラーツアー出場は1試合のみだった渋野選手は、今シーズンもっともブレークしたプロと言っていいと思います。出場が決まっている全英女子オープンでもズバっと振り抜くスウィングで、世界を驚かせてもらいたいと思います。