フィニッシュで体が一回転する様子がまるで釣り人のように見えることから“フィッシャーマンスウィング”と呼ばれ、世界中で大人気となった「虎さん」ことチェ・ホソンのスウィング。ゴルフスウィングコンサルタント・吉田洋一郎がPGAツアーの現場を取材していると……第二の虎さんがっ!?

「完璧なゴルフをしないほうがいい」

一瞬、「PGAツアーに虎さんが!?」と我が目を疑うほど、チェ・ホソン選手にそっくりのフィニッシュをとっていた選手。それが、ニュージーランドのダニー・リーでした。

画像: このフィニッシュ……まるで“虎さん”!?(撮影/吉田洋一郎)

このフィニッシュ……まるで“虎さん”!?(撮影/吉田洋一郎)

現在28歳。ロリー・マキロイ、石川遼らとともに10代から世界の舞台で活躍した早熟のプレーヤー。PGAツアー1勝を挙げ、現在もPGAツアーで戦っている選手です。

ダニー・リーは、もともとあまり飛ぶ選手ではありませんでした。2015年のスタッツを見ると、平均飛距離は283.1ヤードで145位。ところが、今年は301.1ヤードで43位。ほんの数年で実に20ヤードも飛距離伸ばし、アジア系のプレーヤーとしてはアン・ビョンフン、松山英樹選手に次いで3番目に飛ぶ選手になっています。

松山選手などは体が大きく、強く、いかにも飛びそうですが、リーの場合一見飛びそうにありません。なのに飛ぶのは、どうやらこの打ち方に秘密がありそうです。

この打ち方、フィニッシュだけが特徴的なわけではありません。アドレスしたら、剣道の上段の構えのようにクラブを真上に上げ、そこから体を回してトップを作り、インサイドからクラブを下ろしていきます。一体どのような意図があるのか。本人に聞いてみました。

画像: 伸び上がるようにバックスウィングし、沈み込んだ反力を生かして回転。結果、虎さん的なフィニッシュに

伸び上がるようにバックスウィングし、沈み込んだ反力を生かして回転。結果、虎さん的なフィニッシュに

「これ? ヘッドスピードを上げる練習だよ。僕はバックスウィングで右サイドが固まっちゃうクセがあるんだけど、この打ち方だと右サイドを解放して、体を回しやすくなる。こうするとダウンスウィングがシャローになって、インパクトゾーンが安定して飛距離が伸びたよ」(リー)

とのこと。実はリーは、最近話題のコーチである“GG”ことジョージ・ガンカスに教わっています。ガンカスは、伸び上がるようにバックスウィングをとり、そこから沈み込むようにダウンスウィングし、そこから得られる地面反力を回転のエネルギーに変えるようなスウィングを教える傾向があります。

画像: 飛距離アップに成功したダニー・リーに注目だ(写真は2019年の全米プロ 撮影/姉崎正)

飛距離アップに成功したダニー・リーに注目だ(写真は2019年の全米プロ 撮影/姉崎正)

地面反力を生かすというと、ジャスティン・トーマスのようにジャンプしながら打つイメージを持たれるかと思いますが、それを回転に変えることもできます。リーがやっていた練習は、真上にクラブを上げることで上下の動きを強調した練習。それによって生じた大きな回転エネルギー(トルク)により、“虎さん”的なフィニッシュになるというのが真相だったのです。

ところでリーですが、GGからは常々「完璧なゴルフをしないように」と言われているそうです。虎さんフィニッシュドリルは、マジメで根を詰めるタイプのリーに対する「形なんてそんなに重要じゃないんだよ」というGGからのメッセージなのかもしれません。

ともあれ、飛距離アップに効果大のこのドリル、みなさんも試してみてはどうでしょう。

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