近年ゴルフシューズの一大勢力となっているスパイクレスシューズ
スパイクレスシューズは、80年代にジャンボ尾崎が使った「J’s」などで話題になったが、その後はソフトスパイクの普及で下火になり、手軽だけれどもグリップ力に難ありという印象が定着し、初心者向けの低価格帯のものや「練習場用」というニーズが中心となっていた。
しかしここ数年でアウトソールの機能が急激に進化したことで再び人気が上昇し、いまではPGAのプレーヤーにも愛用者が増えるほどの侮れない存在になっている。実際、現在はほとんどのシューズメーカーからスパイクレスシューズが発売されている。
「いまのスパイクレスシューズは、グリップ力の面ではソフトスパイクにまったく引けを取らない」と話すのは、シューズアドバイザーの神谷幸宏氏。
「スパイクレスのアウトソールは、ここ4~5年で急激に進化しました。僕自身は、ブリヂストンの車のタイヤのパターンを取り入れたというソールを試したときに驚いたんですが、各社ともグリッドのパターンなどがとてもよく研究されていて、グリップ力が非常に高い。もはや『滑りそう』という印象でスパイクレスを敬遠する理由はないと思います」(神谷氏)
スパイクレスソールの多くは、見た目はそれほどギザギザしたり尖っているわけではないが、スウィング中にかかる負荷や地面との抵抗を計算されており、「必要以上に引っかからず、しかも滑らない」という高機能を実現しているのだ。
「スパイクレスは、ソフトスパイクよりもデザインがカジュアルで軽いモデルが多いですし、ソールがフラットでスウィングしやすく感じるモデルが多いのも特徴です。PGAで人気のフットジョイ『PRO SL』などはとくにドロップ(かかととつま先の高低差)が少なめなので、ゴルフシューズにありがちな『つま先下がり感』がなくスウィングしやすいと思います」(神谷氏)
神谷氏に、ゴルフシューズの選び方のコツを聞いてみた。
「アウトソールのグリップ感も重要ですが、重さ、ソールの硬さ、アッパーのやわらかさ、そしてシューズ全体の形状など、実際に履いてみて自分に合ったものを選ぶことが大事です」(神谷氏)
重さに関しては、登山靴のように重いほうが歩きやすく疲れないという人と、スニーカーやランニングシューズのように軽いほうがいいという人に大きく分かれるので、そこは個人の好みで選ぶべきだという。
「スウィングする際には、ある程度の重さがあったほうが安定性は感じやすいと思います。ただし、重めのシューズはサイズがピッタリ合っていないと疲れやすいので、クラシカルな革のシューズなどを好む人は、フィッティングを受けるなどして自分の足にきちんと合ったものを選ぶことがより重要です」(神谷氏)
スウィングのしやすさについては、ソールとアッパーの硬さが重要
「ソールにある程度の硬さがあり、シューズのつま先側とかかと側を持ってねじったときにある程度の抵抗感があるほうが、足をしっかり“蹴れる”のでスウィングはしやすいと思います。アッパーにもある程度の剛性感があったほうがシューズの中で足が動いてスウェイするようなことは起こりにくいですが、足が幅広の人などは、少しやわらかめのアッパーのほうがフィットしやすいかもしれません」(神谷氏)
そして意外に見落としがちなのがシューズ全体の形状だ。モデルごとのデザイン差だけでなく、メーカーによって幅や履き口の形状などの傾向もある。そのため同じ26センチのシューズを履き比べても、フィットするモデル、フィットしないモデルがあるし、メーカーによっては1サイズずらしたほうが合うようなケースもめずらしくない。必ず前後のサイズも履き比べて決めるようにしたい。
最後に、広く普及しつつあるダイヤル式のシューレースについて聞いてみた。
「ダイヤル式は足全体をバランスよくホールドしてくれ、何より手軽なのが最大のメリットですが、プレー中にゆるむこともあるので万能とは言えません。それでも、ヒモがほどけたときよりは手軽に締められるとは思います。一方で従来のヒモは、締めどころを自由に調節できるのが利点です。土踏まず部分をしっかり締めたいとかつま先側はゆるめにしておきたいなど、好みの履き方がある人はヒモの自由度が生きると思います。また、すごく甲高とかつま先側が幅広いなど足の形が個性的な人も、ヒモがおすすめですね」(神谷氏)
ゴルフシューズは、高機能化するとともに選択肢が増え、むしろ選ぶのが難しくなっている感もあるが、自分に合った1足に出会えればプレーの快適度は確実にアップする。「次の1足」は、いままでよりもちょっとていねいに選んでみてはどうだろうか。