当時は未発表だったNSプロ950GHネオ(以下、950ネオ)を装着したアイアンで今シーズンの開幕戦「ダイキンオーキッド レディス」を制した比嘉真美子。比嘉によれば、シャフトを入れ替えたのは「開幕の前日とか2日前」だったという。
「ダイキンの3日前に、『試しに打ってみて』と提案いただいて、打ったらものすごくよくて。試合のギリギリで作ってもらいました」(比嘉)
そして、司会者からの「変えようと思った決め手は?」という質問に、比嘉はこう答えた。
「『変えよう』と思ったのは、(テストの)1球目です。インパクトから振りぬくときのシンプルさ、振り抜きやすさ。そして、自分がイメージしている出球(と実際の出球)が完全に一致していたんです」
これは余談だが実際に記者が試打をした印象としても950ネオのフィーリングは良かったし、変えること自体は不思議でもなんでもない。しかし、比嘉真美子といえば国内ツアーのトップ選手。そんなトップ選手がいわゆる“一目惚れ”でシャフト交換を行うなんてことがあり得るのだろうか?
プロゴルファーでクラブフィッターでもあるQPこと関雅史は、「実は、その1球目こそが大切なのです」という。
「シャフトメーカーのツアー担当に話を聞くと、プロにテストしてもらう際に大切なのは、とにかく1発目なんだと口を揃えます。プロに手渡して打ってもらう1発目は『いい結果出てくれ……!』祈るような気持ちになると言います。実は、僕自身お客さんにシャフトフィッティングする際は、各シャフト2発ずつしか打ってもらいません。これも、1発目が大切だから。なので、比嘉プロが一発打って変えたという意見は、僕にはよく理解できます」(関)
関によれば、たとえ合わないシャフトでも、ゴルファーは何球か打つうちにそれに合わせて打つようになるという。しかし、それは自分が主体ではなく、シャフト(クラブ)に合わせた自分にとって不自然な動き。コースで使用した場合、予期せぬミスが出やすくなってしまうのだとか。
そして、当然のことながらアジャスト能力はアマチュアよりもプロのほうがはるかに高い。プロにとっては、2球目以降でナイスショットが出たとしても、すでに意味はないのだ。
「1発目から違和感なく振れるということは、その人のスウィングと本質的に合っているということです」と関。比嘉にとっては、950ネオが“本質的に合っている”シャフトだったということだろう。もちろん、元々のシャフトと重量帯が揃っていたということも当然ながら大きい。
我々アマチュアは、何発も試打を重ねた結果、もっともいい結果が出たシャフト、あるいはクラブを「合うクラブ」と考えがちだが、それはあくまでそのシャフトに自分が合わせたことで、出た結果。それによって仮に最高の結果が出たとしても、最悪のミスをも誘発するようではスコアを作る道具にはなりにくい。
「一発目から上手に当てられる自信なんてないよ!」と思われるかもしれないが、一発目からいい結果が出るシャフトがこの世のどこかにある、と考えたほうがワクワクしないだろうか。
ちなみに、比嘉が一発で変えた950ネオは2019年9月5日発売。大定番モデル・NS950GHのニューモデルは、最近の大型ヘッドアイアンとよりマッチした性能となっている。比嘉のように“一目惚れ”するゴルファーは、果たして続出するか!?