まず見るべきはライ
井上:え~、今日はバンカーです。バンカーはどうしてる?
幡野:うーん、入れないようにしてます!
井上:……プロゴルファーで、バンカーを避けてマネジメントするのって、絶対にダメだよね。プロなら、バンカーから50パーセントはパーが獲れるという感覚が絶対に必要です。基本的に、入れていいバンカー、やさしいバンカーであれば70パーセントはパーセーブできるというのが(プロの)バンカーだよね。どう? 70パーセント、パー獲れるかな?
幡野:ウゥ~、取れませ~ん。2パーセントです。
井上:2パーって、誤解されるから。
幡野:(さすがにそれは)嘘です。
井上:さて、今いるこの状況はちょっと難しくて、ピンまでは12~13歩くらい。土手の高さは2メートルくらい。それでボールはどんな状況の設定にしようか。
幡野:ひざからドロップ!
井上:いやいや、それやるとボール埋まるから。こういう場合は、前の土手にボールを投げて当てて、それがバンカー内に戻ってきた状態を作ったほうがリアリティがあるでしょ。
幡野:ああ、よくありますね。
井上:で、ボールを前にしたら、まず何を考えるか?
幡野:ライです。
井上:そう、ライです。当然ですね。じゃあ、このライは良いか悪いか?
幡野:(マジマジと見る)なんかこう……白い。海みたいな砂ですね。
井上:グハハハハ。
幡野:バーベキューした~い♡
井上:そんなこと聞いてな~い。ライはバンカー内としては最高の状態ですね。ボールの手前側の砂も盛り上がっていません。
幡野:言い訳ができませんね。
井上:凄く柔らかい砂だと、ボールの重さだけで砂に沈んで周りの砂が盛り上がった状態になるんだけれど、今のこのボールは、砂の上にボールが乗っている状態です。だからクラブが入ってくる入り口になんの障害物もないという非常にやさしい状態。ただ、こういう風に砂の上に乗っているということは、砂の下が硬いかもしれないということは警戒しないといけないよね。バンカーに入ってからボールの所に歩いて行くときに、足裏で砂の状態が硬いか柔らかいかを感じとっておいたほうがいいですよね。じゃあ、打ってみようか。
幡野:これはフワッとした球を打ったほうがいいですよね。
井上:そうそう、この2メートルのバンカーの高さを越えなくてはならないから、その高さをクリアするとしたら、距離的にはそんなに飛ばないことになりますよね。だから、土手が高くてピンが近いというバンカーショットは、球さえ上げられれば、そんなに難しくないんです。
幡野:うんうん。
井上:でも、土手が高くてピンが遠いと、いきなり難しくなる。要するに、高さを出せたら距離は出せないから。だから、こういう土手が高いバンカーの場合は、まず土手の高さをクリアできるか、それが出来さえすれば比較的、簡単です。ということで、コレ、できるよね。
幡野:ウフ。ホームランしやすい。
井上:ボールを上げるために、どういう準備が必要かな。
幡野:まずはフェースをしっかり開きます。足も開きます。で、ちょっとボールから離れます。そして、振り幅を決めます。このくらいかなぁ~(と言いながら何回か素振りをして振り幅を決めている風)。
落ちてからのランもイメージしておこう
井上:じゃあ、試合だと思って打ってみよう。
幡野:試合ですか。何打目ですか、(パー5の)4打目?
井上:じゃない。次のパットでバーディを狙うためのバンカーショットです。
幡野:ウワァ~、大変だ! 打ちます。
(カトゥーン!)
幡野:あ!
井上:うん。まあ、ちょっと距離は出ちゃったけど、でも一番やってはいけない、前の土手にボールが当たって戻って来るはやらなかったね。
幡野:カワイイ顔に砂が当たって痛かったです。
井上:(軽くスルー)状況を考えると、ちょっと下の砂が硬かったのかな。
幡野:硬かったですね、ちょっと。
井上:硬いとどういう風になりやすいかというと。
幡野:あ、教えてください。
井上:簡単に言うと、「硬いと飛ぶ」、「柔らかいと飛ばない」、ということだよね。だからこのバンカーの砂の状況からすると、プロであればバウンスが跳ねてホームランになることを警戒すると同時に、飛びやすいバンカーだから、あまり強く振っちゃうとキャリーが出過ぎてしまうという、そこまで予測しておく必要性があったと思うんだ。
幡野:はぁ~。すみません、もう一回おねがいします。
(カシュ!)
(ワンピン強ショート)
幡野:フフ、微妙。
井上:土手が高い所は、意外とグリーンに落ちてからのランが出やすいんですよね。ボールが高く上がっているので飛ばない反面、グリーン面に落下した時のランディングアングル(降下角度)が浅くなるので、ランが出やすいんです。そこは計算して欲しいですね。その前に、アマチュアの人の場合は脱出するということが最優先、では構えはどうなりますか。
幡野:フェースを開いて、スタンスを広げて、少しボールから離れて立って、しっかりお尻をフリフリして足を砂に埋めて。
井上:あとは?
幡野:爆発。
井上:(笑)。そう、ボールの下をしっかりヘッドが通過するような感覚ですね。
幡野:ダフればいいというだけじゃなく、ダフりすぎたら飛ばないですよね。だから、しっかりとある程度ダフる。
井上:そう。必ずボールの下をヘッドが通過することがすごく大事。ドライバーは打ったときにヘッドよりもボールが前に飛ぶでしょ。でもバンカーショットの場合、ヘッドが先に行ってボールが後から飛ぶ。アマチュアゴルファーの人の場合、ボールの下をヘッドが通過するという、この感覚が気持ち悪いわけ。
幡野:ボールを直接打っちゃうということですか。
井上:というか、下を通過すると飛んじゃいそうな気がしたり、速く振るということが気持ち悪かったりするんだよね。だからしっかり夏生が言ったような構えをして、打ったら、ヘッドの下をボールが通過する、このイメージを持って振ること。よし、じゃあもう一回やってみようか。
(カシュ! とナイスショット。)
井上:そう。良いスピード感だったよね。ヘッドが先、ボールの方が後という打ち方を練習するのは実は練習場でもできるんですよね。一番低い高さのゴムティにして、ティの下をクラブヘッドが通過するという、ダルマ落としのようなイメージで、ティを打つんです。そうするとクラブスピードよりもボールのほうが遅いという感覚が身に付きますよね。
幡野:ラブリー♡砂抜けババァ。
井上:なんだそりゃ(笑)。
協力/きみさらずゴルフリンクス