全英オープンではやはりアイアン型UTの人気が絶大だった。
北アイルランドのロイヤルポートラッシュGCで行われた、2019年の全英オープン。個人的にはトッププレーヤーと自然との戦いが垣間見られて、とても面白かった。ゴルフクラブということでは、例年のごとく多くの選手が“全英用”に仕込んできたユーティリティアイアンに注目していた。
「強い風が吹く」、その想定をするだけで5Wやウッド型のユーティリティを外し、代わりにアイアンタイプのユーティリティやロングアイアンを入れる選手が増えるのだから、ゴルフ最大の敵はやはり天候、風なのだと考えさせられた。
ちなみに全英オープンでのユーティリティ部門の使用率を調べてみたところ、最も多くの選手に使われたのがタイトリストのユーティリティクラブだった。ハイブリッドとも呼ばれるウッド型タイプ、アイアン型UTともにタイトリストの製品が使用率No.1を獲得した。
全英らしいのは、そのタイトリストのユーティリティでも、アイアンタイプに人気が集中していたことだ。ウッド型は全体で9本しか使われていなかったが(それでもカテゴリー別では1位)、アイアンタイプは41本も使用されていたのだ。タイトリストでは、全英オープンに向けて数週間前からアイアン型UTの新モデルU・500/U・510プロトタイプをツアーに投入していたから、その効果が大きかったと思われる。
全英オープンではやはりアイアン型UTの人気が絶大だった。
全英オープンが終わって、ようやくこのタイトリストユーティリティアイアンの全貌が明らかになってきた。このシリーズはコンパクトサイズのU・500と、オーバーサイズのU・510の2モデル展開である。どちらも高強度のSUP10フェースを採用して、初速をアップ。内蔵タングステンウェイトの効果で高い許容性を発揮するモデルだ。
こう書くと「どっちも同じじゃないか! 2モデルある意味があるのか?」と思われそうだが、打ってみれば、なるほどこれはまったく違うニーズを持つゴルファーに向けて作られた2系統なのだとすぐに理解できるだろう。
まず、U・500ユーティリティアイアンだが、こちらはまさに“ロングアイアン”としての立ち位置をしっかり守ったモデルだ。見た目もコンパクトでシュッとしているし、打感はソリッドでグシュッとボールを潰して打てる。打ち出し角度もロフトなり。高く上がってくれるやさしさではなく、ミスヒット時の初速の低下をフェースの広範囲で補ってくれる印象だった。
U・510ユーティリティアイアンは、アイアンの風貌ではあるが、ウッド的な弾道が出る性能を目指して作られたモデル。フェースの弾き感や打感、打音がアイアンというよりもウッド的で、ロフト以上に高く飛び出していく感じが強かった。「パワー的にロングアイアンは打てないが、ショートウッドやウッド型のハイブリッドも苦手」というゴルファーに向けて作られている、と感じた。
全英オープンやその前週のスコットランドオープンなどでは、U・500を選択する選手が圧倒的に多かったようだが、確かにウッド並みの高弾道が打てるU・510では“全英用”にはならないだろうと納得。逆に米ツアーの通常コースセッティング(安定した天候)なら、ウッドを抜いてU・510の#1(16度/日本未発売)、#2(18度)を入れ、その下にU・500の#3と#4を組み合わせる選手も現れるような気がした。
ミスヒットに強いロングアイアンが欲しい! というのと、ウッドが苦手! アイアン型で高く上がるクラブが欲しい! というのは、まったく異なるゴルファーニーズである。バックフェースデザインが同じなので、うっかりスルーしてしまいそうになるが、打ってこんなに明確に機能差が出ている2モデルも珍しい。とくにU・510はアマチュアのウッド嫌い派にも人気が出そうな新鮮なモデルである。なんとなくハードに見えるニューモデルだが、機会があれば打ってみていただきたい。