世界ランク40位のうち35名のチームに「TPI」資格所持者がいる一大勢力
TPIとは「タイトリスト パフォーマンス インスティテュート」(以下TPI)のこと。元々はタイトリストがスポンサードしたフィジカル、スウィング、クラブなどの研究や開発を目的に設立された施設ですが、世界中でワークショップを開催しており、「認定プロフェッショナル」を多く世に送り出しています。
レベル1とかレベル2というのは、文字通り、どれくらい高いレベルの知識や技術を習得するかの目安。私が資格を持っているPGA(日本プロゴルフ協会)にもA級、B級といった区分がありますが、それに近いかもしれません。
講習は世界24か国で開催しており「TPI認定」を受けたインストラクターは2万2千人。リッキー・ファウラーは14歳、ジョン・ラームは16歳からTPIで指導を受けており、世界ランク40位以内のプレーヤーのうち35名のチーム内にTPIの認定を受けたコーチがいるというから驚きです。
ただ、必ずしもプロ専用というわけではなく、ジュニアゴルファーからシニアプレーヤーまで幅広くプレーヤーを健康でよりよいゴルフライフに導いているとのこと。それだけに、受講者はゴルフインストラクターだけでなくトレーナーや理学療法士など、フィットネス、メディカルの分野からも数多くみられました。
TPIを創設したグレッグ・ローズ博士は選手をサポートするコーチの役割を、自動車レースのF1にたとえて説明してくれました。
「ゴルフにおいてはプレーヤーが車体でドライバー役はゴルフコーチ。コーチの一番の仕事はその車体を最大の力で最大のスピードで走らせること。そのためには様々な車体のメーターを読み取らなければなりません。
私はコーチとしては読み取らなければならない点は4つあると考えています。第1に技術について。スウィングを見て何が課題なのか、どうすれば改善できるのか。第2に道具。道具を見てそのプレーヤーにマッチしているのかを読み取ること。第3にメンタル。選手との人間関係を構築しメンタル面でのサポートをすること。そして第4は身体能力です。プレーヤーの身体能力を評価しスウィングに対する影響を見ます」(グレッグ)
このようにコーチには4つの読み取るべき“メーター”があるにも関わらず、世界中のコーチのほとんどはスウィング面のコーチしか行っていないのが現状だと博士は指摘します。そこで、これら4つの面からプレーヤーをサポートするメソッドを構築しているというのです。
「TPIの哲学の1つ目は、チームの考え方です。F1レースでいうピットクルーであるところのフィジカルトレーナーや医療関係者と連携してプレーヤーをベストなコンディションにして、その上でゴルフコーチが速く走ることができるようにする。それぞれのクルーが連携しチームで優勝を成し遂げることが大切なんです」(グレッグ)
いきなりタイガー・ウッズのようなスウィングをさせるのがいいコーチではない
グレッグ博士によれば、いいスウィングはひとつだけではないが、選手の身体能力によってもっとも効率の良いスウィングはひとつだけというのがTPIの2つ目の哲学だと言います。
「いいコーチというのは、いきなりタイガー・ウッズのようなスウィングをさせるのではなく、そのプレーヤーがどういう体の動きができるのかを評価してからスウィング作りをするものです」というグレッグ博士の言葉には納得がいきます。
たとえば、タイガー・ウッズ、ダスティン・ジョンソン、マシュー・ウルフのトップの形はそれぞれまったく違います。ただ、それぞれの関節の可動域、筋力などにマッチしていて、効率的なスウィングになっていればそれでいいというわけです。
では効率的なスウィングとは何かですが、それは「再現性があること、ボールがコントロールされている、最小限の力で最大限の力を発揮できていることです」とグレッグ博士は言います。なるほど、これも納得です。
「人間は絶えず進化していきます。ジョンソンやウルフのような(個性的な)スウィングは私も大好きです。TPIの考え方ではスウィングは無限にあるのです」(グレッグ)
TPIの目的は、ゴルファーがより長くゴルフを楽しめること。日本でもワークショップの受講者が増えていることもゴルフをより長く、より楽しくプレーできることにつながっていくと思います。私にとっても、実に参考になる、有意義な講習でした。