とにかく排気量がデカい上に、パワーをコントロールすることにも長けている
今シーズンのケプカの成績は4月のマスターズで2位、5月のPGA選手権で優勝、6月の全米オープンで2位。そして7月の全英オープンで4位とすべてのメジャーで4位以内。メジャーに照準を合わせ、その通りに優勝争いをしているから驚きです。他の多くの選手も、もちろんメジャーに照準を合わせていると思うのですが……。
メジャー初優勝を挙げた2017年の全米オープンや連覇を達成したダンロップフェニックスでも取材をしましたが、182センチ93キロでポロシャツの袖がパツンパツンになるほど鍛え上げられた体から放たれるスウィングはとにかく迫力があります。
ドライバーショットはキャリーで300ヤードを越え、ピッチングウェッジではコントロールしながらも150ヤード近くを飛ばしていました。剛のゴルフのように見えますが、パッティングの精度も高く、ウィークポイントの少ないプレースタイルです。
ケプカといえば飛んで曲がらない選手の代表例という印象ですが、そのスウィングの特徴はフェースを開かずに上げ、トップでフェースが空を向くシャットフェースです。スウィング中のフェースの開閉が少ない分、方向性に優れたスウィングですが、本来飛距離の出る打ち方ではありません。
しかしケプカの場合は飛距離も全体の13位タイと十分に出ています。飛距離と方向性の順位の和でランクが決まるトータルドライビングは8位と、まさにファー&シュアを体現しています。
飛距離の秘訣の一つは、インパクトの衝撃に耐えられる腕や体の筋肉を備えていることです。筋力があると、思い切り振ると怪我をするのではないかという脳のリミッターが働くポイントが高くなり、より速いスピードでスウィングすることが可能になります。ケプカの平均ヘッドスピードは54.5m/sと非常に速いのですが、余裕を持ってコントロールできているように見えます。よく言われることですが、やっぱり排気量がデカい。図体もデカいしスピードも速い、V8エンジンを搭載したアメリカ製スポーツカーといったところです。
もちろん、技術面も当然ながらハイレベルです。キネティックシークエンス(運動連鎖)、すなわち切り返しから下半身、体幹部、腕、クラブと動き出す順序が整っていることで、クラブがスムーズで効率的に加速し、再現性も高い。ただ飛ばすだけでなく、ドライバーからアイアンショットまで飛距離のコントロールも抜群に上手く、方向性も優れています。
余談ですが、この動き出しの順序を整えるには、竹ほうきを振る素振りが効果的です。ドライバーよりも長く重量もある竹ほうきは、動き出しの順序が整っていないと上手く振れません。ケガをしない範囲で試してみてください。ケプカは竹ほうきを振っていないかもしれませんが(笑)。
あまりの強さに、全盛期のタイガー・ウッズと比較する声まで挙がってきたケプカ。メジャー“だけ”にフォーカスすることで知られるだけに、間もなく始まるプレーオフシリーズにどれだけ気合いを入れているかはわかりませんが、大本命であることは間違いがないでしょう。