ライバルたちに飛距離で勝り、フェアウェイもしっかりキープ
ショット、パットとも素晴らしかったですが、ショットで特に印象に残ったのは短いパー4の12番ホールで1オンしたドライバーショットです。勝みなみ選手の帯同キャディとして現地にいた木村翔さんに聞くと、エッジまで229Yでピンまでは262Yというセッティング。
勝選手も最終日はワンオンしたそうですが、グリーン右は池で左はバンカー、しかも優勝争いに残るにはバーディが必須なホール。ここでキャリーでギリギリ右サイドのグリーンをキャッチしました。いやあ、すごかった。よく振れていましたね。
最終日のスタッツを見ても、最後まで勝利を競ったサラスと世界ランク1位のコ・ジンヨンの飛距離がいずれも平均250ヤード、同組のブハイが246ヤードという中、渋野選手の最終日の平均飛距離は264.0ヤード。ライバルたちを15〜20ヤード引き離していたことがわかります。
ソフトボール経験者である渋野選手、本来は右利きだけれどもバッティングでは左打ちだったそうです。あれだけ振れるのは利き腕の右サイドだけではなく、左打ちで鍛えた左サイドの強さとバランスがあったからだと納得しました。
では、スウィングを見てみましょう。まず、アドレス(画像A)では左手の甲が見えるストロンググリップで握ります。両ひじの間隔が狭いことからも、いわゆる「猿腕」といってひじの可動域が広い腕の特徴を持っていることがわかります。
テークバックでは両ひじがくっつくように上がっていますが、これは両わきがしっかりと締まっている証拠です。スウィング中に両わきが締まり腕が体の正面から外れなければ振り遅れずに、インパクトでボールにエネルギーをしっかりと伝えることができます。
右の画像はダウンスウィングですが、ここでも両わきが締まった状態で、腕が体の正面にあることがわかります。猿腕という特徴を上手に自分のスウィングにマッチさせ、メリットにしています。
そしてもうひとつの特徴はトップでフェースが空を向くシャットフェースであること(画像C)。スウィング中にフェースを開閉せずに打つタイプだと言えますが、右の画像を見るとまるでダスティン・ジョンソンのような強いハンドファーストでインパクトしていることがわかります。
早い段階でフェースをボールに向けて球がつかまる状態を作った上で、左腕を返さずに左サイドを切っていける。この動きからは、現在のトレーニングの影響もあるとは思いますが、ソフトボール時代の左打ちで鍛えた強さを感じます。
慣性モーメントの大きく重心の深いヘッドとマッチしたスウィングともいえ、契約先であるピンのG410プラスドライバーとの相性も非常にいいと思います。飛ぶだけでなく、4日間トータルでのフェアウェイキープ率は76.7%という見事な数字で、隙がありません。
曲がらないクラブで曲がらないスウィングをして、ソフトボールで鍛えた左サイドで遠くに飛ばす。見事なスウィング、見事な勝利でした。