ドライバーは「外ブラ」が大人気
テーラーメイド、キャロウェイ、ピンといった海外メーカーのドライバーが人気だ。とにかく飛んで曲がらないというシンプルで強力な性能と、それを支える“ツイストフェース”や“ジェイルブレイクテクノロジー”といった画期的なテクノロジーの組み合わせは魅力的で、多くのゴルファーがこれら“外ブラ”のドライバーを手に取っている。
タイトリストも、シンプルに“スピード”を強調したTS1ドライバーがスマッシュヒット。「外ブラ=飛ぶ」という図式を強固なものにしている。
一方、その外ブラの勢いに押され気味なのが国内メーカー。中でも、ヤマハは非常に強い危機感を抱いて、新しい「RMX」を開発したという。
「ゴルフクラブのトレンドが大きく変化し、シンプルに飛んで曲がらないものでないと評価されなくなりました。開発は一生懸命いいものを作っている。しかし、性能で評価されている他社ブランドと我々は、違うフィールドを走っているんじゃないか。そこで大きく方向転換したんです」(ヤマハゴルフ梶山駿吾氏)
外ブラは「飛ぶ」「曲がらない」を評価されている一方で、ヤマハは「顔がいい」「打感がいい」という評価を得ている。そして、ユーザーの大多数は花より団子ならぬ、「顔より飛び」を求めているという分析だ。
「とにかく今回は(飛んで曲がらない)性能を出す。そのためには顔の良さや打感の良さといったヤマハらしさ、伝統を切り離して構わない。それくらい思い切って、ゼロから見直そうという作業をしました」(前出・梶山氏)
そして、フェース面の裏側をぐるっとリング状のリブで囲むことでフェースの反発を最適化し、ボール初速を高める「ブーストリング」テクノロジーと、慣性モーメントの値が5700g・cm2を超えるという超大慣性モーメントを搭載。一方でヘッドの形状は前モデルよりもはるかに投影面積が大きく、たしかに「今までのヤマハらしくない」新しいRMX(120と220の2モデル)に結実させたというのがヤマハの説明だ。
フェースの裏を「支える」JGRの“サスペンションコア”
ヤマハほどの強い危機感を前面に出しているわけではないが、ブリヂストンも「とにかく飛び」というモデルを出してきた。それが新しい「ツアーB JGR」だ。
ブリヂストンが採用したのは、サスペンションコアと呼ばれる、フェース面下部を裏側から支える構造。これによってフェース面上の高初速エリアを拡大させることができるという。また、フェース面の反発性能を高めたのに伴って反発係数を管理するため全量検査を実施するなど、開発態勢も見直した。
キャロウェイのエピックフラッシュに搭載された「AIフェース(フラッシュフェース)」や、テーラーメイドの「M5」「M6」に搭載された「インジェクティッド・ツイストフェース」など、2019年のトレンドともいえるフェースの反発性能競争に真っ向勝負を挑むという格好だ(ただ、サスペンションコア自体は開発に6年をかけているという)。
外ブラドライバーに真正面から戦いを挑もうとしているヤマハとブリヂストン。両者の違いは、「打感」に対する考え方にあるかもしれない。ヤマハが打感よりも性能を優先したと言い切る一方、ブリヂストンは「ブリヂストンらしい打感の柔らかさは残した」と説明する。
JGRについて、片岡大育はこうコメントしている。
「ドライバーに求めるものは飛距離とコントロール性のバランスです。ただ飛んでも狙ったところに打てなければ意味がありません。飛距離を伸ばしながら狙ったところに打てるドライバー。それはくっついている時間が長く感じる打感の柔らかさにあります」(片岡)
ひたすら愚直に性能だけを追求したヤマハ。飛びと打感の良さの両立を狙ったブリヂストン。同じ日に発表された2つのドライバーは、似たような危機感から出発し、わずかに違う方向性を進んで世に出ることになった。
果たしてゴルファーから評価されるのはいずれか。“打倒・外ブラ”を果たすことはできるのか。9月6日発売のRMX、9月13日発売予定のJGR、どちらも注目だ。