クラブヘッドは車体。シャフトはモーター
ドワイト氏は、ヘッドの質量は決まっているため、ジュニアへのクラブフィッティングで重要なのはシャフトだと語る。その関係性をドワイト氏はヘッドが車体ならシャフトがモーターだと表現した。このモーターが正しく機能しなければ最大飛距離は得られないし、方向性も得られるわけがないということだ。
さて、そこでシャフトをどのようにフィッティングするかが重要になってくる。具体的には、まず7番や6番などのミドルアイアンを地面に対して垂直に立て、グリップエンドをおへその高さと比較する。高ければ長すぎ、低ければ短すぎと判断する。
長さが合えばライ角も丁度よくなるはずで、ミドルアイアンを基準に全体のシャフト長を合わせれば基本的にすべてのクラブにおいてライ角も合うというわけだ。また、クラブが1インチくらい長い分には、成長に応じて使えるようになるため、あまり厳密に考えすぎることはないという。
シャフト長のフローを合わせたら次はクラブバランスの調整に入る。ジュニア向けというと軽く感じるように調整されがちだが、やはり大人同様に「D0」よりも軽いセッティングにするとスウィング中に操作ができすぎてしまい、悪影響となるようだ。
ましてや感覚の良い子どもたちは、軽いクラブだと小手先の技を身につけてしまうので避けたいところだ。バランスの決定はシンプルに本人がもっとも効率よくスピードを出せるポイントとなる。
ドワイト氏によれば、軽く設計されたジュニア用クラブは、ヘッド自体が軽量のためそもそもエネルギーが出にくく、距離も出ないため、早い段階で通常のクラブを使っていいという。バランスがD0を下回るようであれば、そのヘッドは少し軽いと考えていいかもしれない。
バランスが決まれば必然的にシャフト重量もおおよそ決まってくるわけだが、最後にフレックスやトルクとの相性を見ていく。重い代わりにフレックスが固くなりすぎてしまい体力に合わないこともあるし、逆に軽くし過ぎてトルク角が多く、真っすぐにインパクトするのが難しくなることもある。
ここで何種類もあるシャフトの中からぴったりなものを探すという作業が始まるのだ。ちなみにドワイト氏いわく低年齢層のジュニアゴルファー向けのクラブには極端に柔らかいカーボンシャフトが使用されていることが少なくなく、しなり過ぎによるクラブの暴れが上達を妨げることもあるという。
最近は軽量スチールシャフトのラインナップも豊富なので、あくまで体力に合わせてというのが前提であるが早めにスチールに挿し変えることを推奨しているようだ。
シャフトを選んでフィッティングするのはある程度お金がかかるが、IJGAのアカデミーでは“先輩”たちのお下がりシャフトをストックしておき、親の負担を減らすような取り組みがされている。
今にフィッティングするのではなく、目指すスウィングに合わせる。
何よりも大切なのは何のためにフィッティングを行うか、という点である。もちろん、少しでもスコアを縮めるためでもあるし、ケガの予防もまたひとつである。しかし、より高いレベルを目指すジュニアゴルファーがすべきなのは「目指すスウィングに合わせる」ということである。
一般的なゴルフショップで大人のゴルファー向けになされるクラブフィッティングは言ってみれば商業的で、いかに現状のまま最大の結果を出すかということに注力している。だがジュニアゴルファーの場合、今週末の試合で良い成績を出すのはもちろんだが、半年後、さらには翌年にもっと良いスイングをにつけられるようにフィッティングはするべき。
つまり大人の場合は「人にクラブを合わせる」が、ジュニアの場合は「スウィングにクラブを合わせる」のであり、クラブによってスウィングを正しい方向へ導くというのが世界基準のクラブフィッティングなのだ。