ドライバーが飛んでパーオン率も高くパットも上手でプレッシャーに強い
穴井詩選手と言えば豪快なドライバーショットが印象的ですが、パーオン率も8位と非常に高いことが強み。今大会でいえばプレーオフを戦ったイ・ミニョンに次いで2位と、ショット力はツアー屈指です。
パーオン率が高いので、必然的に1ラウンドの平均パット数は悪くなりますが、バーディ数は1位でパッティングにも穴がありません。
「飛ばし屋って曲がるイメージあると思うんだけど、(穴井は)ドライバーが上手くてパーパットがやたらと入る」と実力者の成田美寿々に言わしめるくらい、ドライバーだけではないスキルの持ち主なのです。
もう一つ、昨年から大きく飛躍しているのが、最終日の平均ストロークです。昨年の12位から3位に、4日間競技の最終日の場合は24位から2位に上がっています。これは技術もありますがマネジメント面での成長が大きいと思います。
そして言わずもがな、得意のドライバーショットでは飛距離278ヤードで1位とビッグドライブを連発していました。シーズンを通じての順位も1位と、技術とメンタルのバランスのとれた、充実のシーズンを過ごしています。
この成長に関して、ゴルフ5所属選手をサポートする田子元治プロに話を聞くと、こんなコメントが返ってきました。
「以前は常にマン振りの感じだったんですが、ホールによって飛距離をコントロールするようになったり、アイアンもライン出しが上手くなってます。ドライビングディスタンスを計測するホールはしっかり振っていますけどね。最終日に向けてスコアがよくなっているのは、オフのトレーニングが上手くいって、体力的に上がっていること。それとウィークポイントをショートゲームにあるとして、練習の仕方も変わったこともあると思います。パッティングも向上してきましたし、今回の優勝でまた一皮もふた皮も剥けたと思います」(田子)
フックに握ってシャットに上げ、体の回転で振り切る
では、スウィングを見てみましょう。アドレスとテークバックを見ると(画像A)左手の甲が正面を向くストロンググリップで握り、右手もそれに合わせて横から添えています。テークバックでは、腕とクラブを伸ばしたまま、フェースが地面を向くくらい開かずに、ワイド(手が体から遠い)に上げていきます。
トップ(画像B)でも左手首の角度はキープしたまま。一貫してシャットフェースを貫いていることがわかります。
そして切り返し以降は下半身リードで回転力を効率よくクラブに伝え、インパクト前後でフェースの向きをスクェアにキープしています(画像C)。ストロンググリップで握るスウィングの特徴でもありますがフェースの開閉が少なく、その分体の回転量が大きくスピードも速いです。
「NEC」では、優勝争いの中でもしっかりと振り切るスウィングが非常に印象的でしたが、その要因はどんなときも一定のテンポで振ることができているからだと思います。打ち急がずにしっかりとバックスウィングをとり、クラブの動きを感じながらダウンスウィングに入る。
フィーバー中の渋野日向子選手、そして屈指の実力者イ・ミニョンらとの優勝争いの中で、いつも通りに振るのは簡単ではないはずです。焦りやプレッシャーでともすればバックスウィングは浅くなりやすいのですが、穴井選手の場合しっかり深くバックスウィングができていました。
アマチュアの方にとっても、一定のテンポで振ることを心掛けるだけでも多くのミスショットを回避できるはず。ぜひ、参考にしてもらいたい点です。
高いショット力に加えパットも巧く、最終日にスコアが出せるメンタルも加わって、賞金ランクが4位なのも納得がいきます。躍進の続く黄金世代の壁になり、後半戦の賞金王争いを盛り上げる一人に間違いありません。もちろん、シーズンが終わったとき、賞金ランク最上位に“穴井詩”の名前がある可能性も大いにあるのではないでしょうか。