PGAツアー最終戦「ツアー選手権」に出場中で、逆転での年間王者に向けて戦う松山英樹。日本のエースの今シーズンを、海外ツアー取材歴20年のゴルフエディター・大泉英子が振り返る。

ここにきて年間王者のビッグチャンスが到来

先週のフェデックスカップ・プレーオフシリーズ第2戦「BMW選手権」では63というビッグスコアを2回も叩き出し、通算20アンダーの単独3位に終わった松山英樹。あと一歩のところでジャスティン・トーマスに優勝をさらわれたものの、フェデックスカップランキングで33位から15位まで浮上。ツアーのエリートが30人だけ出場できる最終戦「ツアー選手権」に6年連続出場を決めた。

今年はまだ未勝利の松山だが、「ツアー選手権に出たい」という気持ちがあのような爆発的なスコアを生み、久しぶりの優勝争いのステージへと一気に駆け上がらせたのだと思う。彼の土壇場の底力を改めて見せつけられ、日本人のゴルフファンにとっては嬉しい週末だった。

そして今週は新システムにより3アンダー、15位タイからのスタートとなった松山。プレーオフシリーズ2戦を終えて、フェデックスカップランク1位だったトーマスは10アンダーからスタートしたが、初日はスコアが伸び悩みイーブンパー。通算10アンダーのままザンダー・シャウフェレ、ブルックス・ケプカとともに首位タイに立った。そして松山は66をマークして通算7アンダーの7位に浮上。1日で首位と3打差まで縮まった。

今の松山なら初日を迎える前につけられている首位と7打差のハンデなど、容易に覆せそうなほど「絶好調」に見える。ビッグスコアを叩き出したとしても満足することのない彼にしてみれば、「好調」ではない、と即座に否定されてしまいそうだが、明らかに最近の調子は上向きだ。

画像: (写真は2019年の全英オープン 撮影/姉﨑正)

(写真は2019年の全英オープン 撮影/姉﨑正)

1ヶ月前の「全英オープン」では1年ぶりの予選落ちをし、松山は「自分の力不足。技術的にも精神的にも、少しミスをすると悪いことを考えてしまう。まずは予選通過を目指して頑張りたい」と語っていた。普段は「予選通過が目標」とは絶対に言わない彼が、「まずは予選通過」と語っていること自体、調子が悪く、精神的に厳しいのかな、と想像を抱いた。

その翌週のWGCフェデックス・セントジュード招待では43位タイ(予選落ちなし)、「ウィンダム選手権」で再び今季2試合目の予選落ち、そしてその翌週の「ノーザントラスト」では30位タイに終わっている。この1ヶ月は、いつも以上にいろいろなことを考えながら練習に取り組んだり、それでも自信を持てなくて精神的にネガティブになってしまうこともある日々を送っていたのではないかと思う。だが、63の好スコアを2回もマークし、一気に優勝争いに加わった先週の「BMW選手権」の前の2週間で彼が語っていた言葉を聞いていても、好プレーを生みそうな予兆はあった。

「先週(WGCフェデックス・セント・ジュードインビテーショナル)よりもショットの感触は全然変わってきているし、あともう少し自信を持って打てれば……。積み重なっている悪いものは少しずつ解消されている。打つ時に保険をかけすぎてしまうところがあるが、どれくらい勇気を持って打てるかが大事」

「良いところと悪いところがはっきりしているが、良いところは先週までとは違った感覚がある。そういうところでバーディも取れているし、もう少し、というものを全体的にうまくやれれば、勝つチャンスも増えるんじゃないかと思う」

「(パッティングは)年間を通して、自分の流れが来るまで我慢する時かな、という感じ」

話を聞いていると、ショットに関しては、徐々に良いショットも増えてきて、特にフルショットに関しては手応えを感じている様子だった。あとは、自信を持ってショットすること、130~140ヤードくらいのコントロールショットをしっかりチャンスにつけること、ミスをできるだけ少なくすること。これらが、上位に行くためのカギであることを松山ははっきりと語っていたのである。

BMWでの優勝争いを経て、ツアー選手権へ。初日は6バーディ、2ボギーの66で回り、首位とは3打差につけた。ロングパットも決まり、カップのフチで止まったかに見えたボールが9秒後に、転がり落ちてバーディ、というラックもあった。

「12番までは満足のいくラウンド。そのあとの内容がショットもパットも良くなかったので、明日に向けてしっかり調整したい」(ゴルフネットワークのインタビューより)

上位には世界ランク1位のブルックス・ケプカ、一昨年「ツアー選手権」で優勝し、初日のベストスコア64をマークしたザンダー・シャウフェレ、先週優勝したばかりの宿敵ジャスティン・トーマスらがいる。トップ10で今季未勝利なのは松山だけだが、逆に未勝利でこの位置にいる彼の存在は周囲の選手にとっても不気味だろう。

ツアー屈指のショットメーカーが、優勝に飢えている。先週のようにショットもパットも決まり、爆発的なスコアを叩き出されれれば、今週こそは松山に全てを持っていかれてもおかしくはない。これまで未勝利で、プレーオフシリーズ第1戦が終わっても上位30位以内に入れるかどうかわからなかった彼が、ツアー選手権で優勝し、すなわちフェデックスカップ総合優勝者となって約16億円をゲットする大きなチャンスがここにきて到来しているのだ。

ジャスティン・トーマスが先週のBMW選手権で1年ぶりに優勝を遂げた。それに呼応するように松山も好プレーを続けている。過去、CIMBクラシック、SBSトーナメント・オブ・チャンピオンズ、全米プロと1シーズンで3試合もトーマスに負けた松山だが、宿敵トーマスが先週ようやく勝った今、松山もこのまま引き下がるわけにはいかない。今週末の「ツアー選手権」、いつにも増して観戦に熱が入る。

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