今シーズン女子ツアーを盛り上げている98年度生まれの黄金世代の女子プロ達。そのスウィングを短期集中でプロゴルファー・中村修が毎日一人ずつ分析していく3日目は、AIG全英女子オープンで海外メジャー制覇という快挙を成し遂げた渋野日向子だ。

シャットにあげてフェースを返さずインパクト

全英女子オープンを制したことで、そのスウィングが世界レベルであることを証明した渋野日向子選手ですが、ハンドダウンな構え、フックグリップ、シャットフェース、ハンドファーストなインパクトと、特徴がいくつかあります。

ドライバーショットを後方から撮影した連続写真を材料に、改めてそのスウィングをじっくり見ていきましょう。

画像: 全英女子オープンを制した渋野日向子(写真は2019年のニッポンハムレディスクラシック 撮影/岡沢裕行)

全英女子オープンを制した渋野日向子(写真は2019年のニッポンハムレディスクラシック 撮影/岡沢裕行)

まずはアドレスからトップにかけて。手の位置を低く構えるハンドダウンが特徴ですが、本人には特別ハンドダウンにしている意識はないといいます。いわゆる“猿腕”で、手が長い彼女が構えると、自然にハンドダウンになるのだそう。

アドレス時、太ももの筋肉にソフトボールで鍛えた力強さがありますが、それがバックスウィングを安定したものにしています。トップではフェースはほぼ空を向くくらいのシャットフェース。このとき、右のひざが伸びていないこと、前傾角もまったく崩れていないことから、筋力の強さを感じます(画像A)。

画像: 画像A:トップではフェースがほぼ空を向くくらいのシャットフェース。右膝が伸びずに前傾角も崩れていないことから筋力の強さを感じる

画像A:トップではフェースがほぼ空を向くくらいのシャットフェース。右膝が伸びずに前傾角も崩れていないことから筋力の強さを感じる

続いては、画像Bのダウンスウィングと画像Cのインパクトをぜひ見比べてみてください。インパクトでのシャフトの延長線上、ダウンのシャフトの軌道が重なっているのがわかると思います。

いわゆるオンプレーンですが、この角度が非常に浅く、入射角の浅いインパクトを迎える準備が整っています。手元を低いところに下ろすことができるのは、切り返しから左手首を手のひら側に折る「掌屈」の動きに加え、前傾角がキープできていること、肩を開かずに上半身と下半身の捻転差が作られていることといった要因があります。

入射角が浅いと、スピン量が安定することがひとつ。インパクトでロフトが立ち過ぎたり、寝過ぎたりすることが少なく、縦の距離感が合うといったメリットがあります。

画像: 画像B:ダウンスウィングではインパクトで手元が低いところを通る準備ができている

画像B:ダウンスウィングではインパクトで手元が低いところを通る準備ができている

インパクト後のフェースの向きを見るとフェースのターンが少ないことが見てとれます。右側の体側が縮まっていて、サイドベント(側屈)が強いスウィングです(画像C)。

画像: 画像C:フェースターンの小さいスウィング

画像C:フェースターンの小さいスウィング

技術的にはストロンググリップでフェースローテーションが少ないタイプのスウィングです。下半身でクラブのスピードをコントロールできていることで、フルショットだけでなく距離を合わせるようなショットでもコントロール性が抜群。

全英女子オープンはもちろん偶然や勢いだけで勝てる試合ではありませんが、スウィングを見ると、やはりその完成度は高く、歴史的勝利も十分にうなずけます。後半戦、そして来年以降、彼女がどれだけの活躍を見せてくれるのか、まだまだ底が知れません。

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