アイアン用軽量スチールシャフトの代名詞的存在となっている日本シャフトのNSプロ950GH。その最新作発表会を取材したゴルフトレンドウォッチャー・コヤマカズヒロが“NS950”の歴史について語る。

7月17日、日本シャフトの新製品「NSプロ950GHネオ」が発表になった。同社は今年、60周年を迎える。この60年間で記者発表会を開いたのは今回で2回目というから驚きだ。その一回目の発表会は、今から20年前のこと、「NSプロ950GH」発売のときだった。

画像: 上が20年前に発売された「NSプロ950GH」、下が新モデル「NSプロ950GHネオ」

上が20年前に発売された「NSプロ950GH」、下が新モデル「NSプロ950GHネオ」

「NSプロ950GH」の登場前夜、90年代後半はカーボンシャフトの全盛期だった。現在も定番となっている「ダイナミックゴールド」すら、ラインナップから姿を消し始めていて、アイアンシャフトの一般的なラインナップはカーボンと、当時流行していた「ライフル」シャフトだった。

これほどまでにカーボンシャフトが流行していたのは、当時、最強を誇った尾崎将司が、他の選手に先駆けて、アイアンのシャフトをカーボンに変えたからだろう。一方、「ライフルシャフト」は、80〜90年代を代表する名プレーヤー、グレッグ・ノーマンが愛用したことで知られている。今も昔もツアープロの影響は大きいのだ。

日本シャフトは、もともとの社名を日本熱処理研究所という。その名の通り、金属加工を得意とする会社で、スキーのストックや野球のバットなどを作っていた時期もある。90年代には「NSプロ」という重量級のシャフトを展開していて、「ダイナミックゴールド」がフィットしない、一部のプロに愛用されていたが、一般ユーザーにとっては知る人ぞ知るシャフトだった。

画像: 90年代には「NSプロ」という重量級のシャフトを展開していた(写真は上がNSプロレッド、下がNSプロオレンジ)

90年代には「NSプロ」という重量級のシャフトを展開していた(写真は上がNSプロレッド、下がNSプロオレンジ)

この時期、日本シャフトの経営は危機的なものだったという。当時の状況を鑑みると、それも仕方なかっただろう。なんといっても市場にスチールシャフトの需要がほとんどなかったのである。カーボンシャフト全盛で、「ライフル」のような機能性の高いスチールシャフト以外は、時代遅れという印象だった。

今でこそ、アイアンシャフトの定番として、押しも押されもせぬ地位を築いている「NSプロ950GH」は、起死回生を期した悲壮な想いで生まれたのだ。同社の金属加工の技術と日新製鋼の新材料を使い、これまでになかった軽量スチールシャフトというカテゴリーを開拓した。ちょうど21世紀に変わろうとするころ、そこにブルーオーシャンのニーズがあったのだ。

以後、「NSプロ950GH」は、大手メーカーの標準シャフトにも採用され、ゴルファーの定番として、この20年間愛されてきた。シリーズ累計では、なんと4000万本という販売数を誇り、新製品が次々と発売されるゴルフギアの世界で、驚異的に売れ続けている製品だ。

ここまで巨大な存在である「NSプロ950GH」に、新モデルを出すということは、大きなプレッシャーがあるのではないだろうか。同社の商品企画・広報担当の栗原一郎氏は、「950GHと名前をつけるからには、これまで支持され続けてきた950GHの振り味や爽快感を絶対に外せないと思っていました」と話す。

現在のゴルフギアの開発現場では、弾道測定器での緻密な測定は当たり前。マシンテストはもちろん、コンピューターを使ったシミュレーションも活用され、ハイテクを活用するのが当たり前になっている。しかし、今回の「NSプロ950GHネオ」は、あえて人間のフィーリングの部分にこだわったという。

画像: 人間のフィーリング部分にこだわったという「NSプロ950GHネオ」

人間のフィーリング部分にこだわったという「NSプロ950GHネオ」

「初代950GHが生まれた99年当時は、トラックマン(弾道測定器)もなければ、EI分布もない。会社が危機的な状況の中、人間が打って、これというものを追求した結果、生まれたのが950GHだったです。だからネオの開発でも、今までよりももっと人力で、気合とガッツで作らなければいけないと思いました」(栗原氏)

もちろん、最先端の機器は使用するものの、あくまでもヒューマンテストによって、フィーリングと爽快な振り味にこだわって生まれたのが、今回の「NSプロ950GHネオ」だ。筆者も様々なヘッドで、試打を行ってみたが、追随性が高く、操作がしやすい。初代「950GH」よりも中間部に張りがあり、爽快な振り抜き感が得られる。同社が重要視するのも、この振り味の良さだ。

人間が使う道具だからこそ、マシンテストでは表れない、人間の感覚を大事にしたことで、20周年を飾るにふさわしいシャフトに仕上がったと感じる。発売は、9月5日、すでに各メーカーの秋の新製品にも続々と採用が決まっている。この先10年の定番になりうる完成度の高いモデルの登場だ。

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