古江彩佳、西村優菜のプラチナ世代を代表する2選手がそれぞれ「24アンダー」「20アンダー」という異次元のスコアで通過したことでも話題のLPGA(日本女子プロゴルフ協会)プロテスト。二人に実力があるのは自明だが、なぜここまでの爆発的スコアとなったのか? “石川遼の先生”として知られる代々木高校ゴルフ部監督の吉岡徹治氏に聞いた。

1次予選から古江彩佳、西村優菜の2人の実力者が他を大きく引き離し……

本年度の女子プロテストのトップを切って、兵庫・有馬ロイヤルGCで行われた「LPGAプロテスト第一次予選D地区」。3日間で開催され、上位50人が2次予選進出を決めた舞台で、圧倒的な数字をマークしたのが、通算24アンダー首位通過の古江彩佳、同20アンダーで通過の西村優菜の2人だ。

2015年から昨年までの記録を見ると、全13会場で行われた一次予選でトップがアンダーパーだったのは7会場。残りの6会場のトップの選手はイーブンパーかオーバーパーのスコアで予選を通過している。アンダーパーの選手でも、二桁アンダーは例がない。

もちろんコースが違えば難易度も違うし、天候やセッティングによってもスコアが大きく変わるのがゴルフ。その上で、やはりプロテスト一次予選での24アンダー、20アンダーというスコアは圧倒的だ。

 

画像: プロテスト1次予選で24アンダーを叩き出した古江彩佳(左)と西村優菜(右)(写真は2019年のリゾートトラストレディス 撮影/大澤進二)

プロテスト1次予選で24アンダーを叩き出した古江彩佳(左)と西村優菜(右)(写真は2019年のリゾートトラストレディス 撮影/大澤進二)

将来の女子プロゴルフ界を担う逸材がプロテストにこぞって挑戦する図式は例年と変わらないはずだが、今年からは現在の高校3年生世代も受験可能になったり、2021年からQT(ツアー出場権を争う予選会)の出場資格がLPGA会員に限られることになったことで現役のツアー選手もプロテストに挑むことが予想されたりと、例年以上の激戦が予想されるのだ。

石川遼が15歳でツアーに勝った当時の杉並学園ゴルフ部監督で、現在は代々木高校ゴルフ部監督の吉岡徹治氏は「これからも各会場で古江と西村のような他の選手を置き去りにして、最上位を争うような展開が起きるのではないではないか」と話す。

昨年プロテストに合格した渋野日向子が及ぼす波及効果

その理由を、吉岡氏は「渋野効果」と表現する。言うまでもなく、日本人として42年ぶりにAIG全英女子オープンで海外メジャー制覇を成し遂げた渋野日向子のことだ。

全英女王の渋野日向子は1年前の2018年にプロテストに合格。すでにツアー2勝、メジャー1勝を挙げており、プロテスト合格を目指す選手たちからすれば雲の上の存在な気もするが……「そこが昔のゴルファーとは違う、今の世代の子たちのすごいところです」と吉岡監督。どういうことか?

「簡単に言えば『渋野プロができるのであれば、私も絶対にできるはず』と普通に思っているところです。今の彼女たちの立ち位置と、渋野プロが事を成し得た(メジャーの)舞台では、第3者からすればずいぶんと距離を感じると思いますが、実際に、今年のプロテストを受ける選手のなかでも、渋野プロのアマチュア時代を知っている選手が数多くいます。なかには、小学生のときに同じ大会に出て『勝ったことがある』という選手もいるのではないかと思います。そんな選手たちからすれば、今回の渋野プロの快挙は、いい意味で、現在の自分のレベルと世界レベルとの距離感覚を示してくれたのでないかと思います。『そう遠くはない』『私も不可能ではない』という意味で、です」

全英女子オープンを制覇した渋野日向子の快挙に、ひと世代下の面々が多いに刺激を受けているというのだ。たしかに昔なら「メジャーチャンピオンと自分を比べるなんておこがましい」と思ったはず。しかし、「渋野さんが勝てるなら、私にもチャンスがある」と思うのが新時代のゴルファーたちのメンタリティのようだ。

ライバルが身近にいる選手ほど”伸びる”のがこの世代

渋野効果だけでなく、吉岡氏がもうひとつ指摘したのがライバル関係の存在だ。この世代の有望選手の特徴として「必ず身近なところに簡単には勝てない“ライバル”がいるのも特徴です。『その子に勝たない限りは……』という意識は常、日頃からひと一倍植えつけられている選手が多いです」

先日の「1次予選D地区」で起きた古江彩香と西村優菜の‟20アンダー超の攻防”のような構図は、実は各地の競技で頻繁に起きるという。

代々木高ゴルフ部監督でもある吉岡氏。今年のプロテストを受験予定で、同高のゴルフ部員でもある今年の日本女子アマチュア選手権2位の和久井麻由と6月の宮里藍サントリーレディスで7位タイでベストアマを獲得した笹生優花の2人はまさにそんな関係だという。

画像: プロテストを受験予定の笹生優花(左)と和久井麻由(右)。ともに代々木高ゴルフ部で普段から互いを意識しあう仲だという(写真は2016年の宮里藍サントリーレディス 撮影/大澤進二(笹生)、2018年のフジサンケイレディス 撮影/岡沢裕行)

プロテストを受験予定の笹生優花(左)と和久井麻由(右)。ともに代々木高ゴルフ部で普段から互いを意識しあう仲だという(写真は2016年の宮里藍サントリーレディス 撮影/大澤進二(笹生)、2018年のフジサンケイレディス 撮影/岡沢裕行)

「普段は和気あいあいとやっていますが、ゴルフのときは練習も別々。練習する姿を見ても、間違いなく『あの子には負けたくない』という雰囲気をお互いから感じます。監督の私としては、むしろそんな”バチバチ”の空気感を利用しているぐらい。そうすることでレベルアップが測られるのは間違いありません」

圧倒的な存在感を放つであろう有望株たちも順調に駒を進めれば、最後は最終選考の舞台で一堂に会する。そこには、今年海外女子メジャーで2試合続けて予選通過を果たした最強アマチュア・安田祐香ら予選免除組、さらにはプロ資格を持たないツアープレーヤーたちも加わる。

プロテストの合格基準となる上位20名の枠。そこは狭き門という言葉では到底足りない、過酷な戦場になりそうだ。

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