球筋を打ち分けるようにしてパーオン率が上がった
1997年生まれ、22歳の蛭田みな美選手は、1998年度生まれの黄金世代の一学年上の世代で、畑岡奈紗、勝みなみ、三浦桃香、大里桃子、小祝さくら選手らも出場した2014年の日本女子アマを制しています。2016年にプロ入りし2017年はフル参戦を果たすも賞金ランク70位。2018年は13試合の出場にとどまりシード獲得はなりませんでした。
今シーズンはQT(予選会)ランク18位の資格でフル参戦していますが、春先の5戦連続の予選落ちを含めて24戦中12試合で予選落ちを喫し、決して順風満帆ではありませんでした。
しかし、「サマンサタバサレディース」以降は7戦して予選落ちわずかに1回、5試合で4位タイと9位タイを含むトップ20フィニッシュ。約800万円を稼いで9月4日現在でトータル約1500万円まで賞金を積み上げ賞金ランクは51位と、悲願のシード獲得が視野に入る位置にまで盛り返してきました。CATレディースでは最終日のバックナインで7連続バーディという離れ業も見せています。
明らかなV字回復には、どんなターニングポイントがあったのか。きっかけは、「サマンサ」の前の試合、予選落ちを喫した「ニッポンハムレディス」でその週バッグを担いでくれた渡辺宏之キャディに「球筋を打ち分けしてみたらどうか」と提案されたことにあったようです。
もともとドローヒッターの蛭田選手ですが、練習場ではフェードを打つ練習をしていたこともあり、実戦で試してみるとパーオン率が上がってきたといいます。それに加えて、7連続バーディの背景には渋野日向子選手の影響もあったと言います。
「カップへ入れにくいイメージのときは、カップインするイメージだけでストロークすればいい」という話を渋野選手から聞いたそうで、それを参考にカップへ入るときのイメージをはっきりと持つようにしたら、ラインと距離感が合うようになったというのです。
「カップに入る速度と、カップのどこからか入っていくかを明確にイメージするようにしました。下りのラインだったら本当にゆっくり入っていくイメージだし、上りのラインだったらちょっと早く入っていく感じのイメージです」とは本人の弁。イメージの話なので、アマチュアゴルファーのみなさんにも大いに参考になりそうですね。
さて、そのスウィングをチェックしてみましょう。グリップはオーソドックスなスクェアグリップで、トップは非常にコンパクト。トップ(画像A右)では、下半身はもうダウンスウィングに入っていますので、この手の位置よりも前に切り返していることになります。
それでも背中はターゲットを向いていて、上半身のねじれはしっかりと作られていますから、決して浅いバックスウィングではありません。頭の位置がアドレスよりも低くなっていることから、地面反力を使うための沈み込む動きも見られます。
飛ばしの三大要素である左へのスライド、回転、地面反力のうちスライドはほとんど使わずに、切り返しで回転を使い、それ以降は地面反力を大きく使うタイプです。
ポイントは、上半身が開かないうちに左ひざを伸ばし始めているところです(画像B左)。地面からの反力を使うために、切り返しで沈み込みこんだらすぐにひざを伸ばすように使っていることがわかります。インパクトでは左足のかかとも浮くくらい、地面反力を使っています。
キャディさんのアドバイスでドローとフェードを打ち分けるようにしたことがパーオン率上昇につながり、渋野日向子選手から得たヒントでパッティングも改善させた蛭田選手。ふたつのきっかけで、日本女子アマを勝った地力を発揮する“覚醒のとき”が来たのかもしれません。