世界的にはまったく無名の20歳が全英女子オープンで躍動した。日本勢42年ぶりメジャー制覇を成し遂げた渋野日向子のキャラクターは観るものをいつの間にか“シブコワールド”に引き込んだ。重圧を感じさせない笑顔。若者だけに許される無謀さの裏に潜む確かな自信。渋野が紡いだ渾身のサンデーバック9全31ショットを振り返ってみよう。

笑顔で駄菓子を齧る、齧る、齧る。「緊張感はほとんどなかった」

14番172ヤード、パー3。ティショットはピン右横5メートル。ここを獲れば3連続バーディで馬群から頭ひとつ抜け出せる。しかしバーディトライはわずかに左に切れ白球がカップの底を打つ快音は響かなかった。2パットのパー。

そして次の15番が大きな意味を持つことになる。その時点でサラスが17アンダーまで伸ばし渋野は1打差の2位タイに後退していた。バーディが欲しいパー5はコース最多2個のバンカーが待ち構える難所だが、普通に振っても「あれっ、飛んでる」と感じていた渋野は遥か彼方を目指し紫電一閃ドライバーを振り抜いた。気迫の一打はフェアウェイ右サイドをしっかりとキープ。

するとそこで渋野が驚くような行動に出る。2打地点で自分の番を待つ間、駄菓子の袋を取り出し食べはじめたのだ。中継のカメラを見つけるとまぶしい笑顔を向けおいしそうに齧る、齧る、齧る。プレッシャーがかかるメジャーの優勝争いの最中この余裕はいったい…?

画像: ラウンド中カメラ目線の笑顔で駄菓子を齧る姿がクローズアップされ「タラタラしてんじゃね~よ」の製造元に問い合わせが殺到。着用したビームスのウェアが売り切れるなど波及効果は絶大(写真/Getty Images)

ラウンド中カメラ目線の笑顔で駄菓子を齧る姿がクローズアップされ「タラタラしてんじゃね~よ」の製造元に問い合わせが殺到。着用したビームスのウェアが売り切れるなど波及効果は絶大(写真/Getty Images)

しかしその行動は本人にとっては突飛でもなんでもなく、ただ大好きな駄菓子を齧って舌とお腹、そして脳を満たしたかっただけ。

「緊張感はほとんどなかった」

残り266ヤードの第2打をグリーン手前30ヤード地点に運ぶとアプローチを3メートルに寄せた。真っ直ぐのラインを読んでど真ん中からカップに沈め再び首位に並びかける。

強烈なオーラを纏い始めた渋野は16番(408ヤード、パー4)のティに向かいながらギャラリーと笑顔でタッチを繰り返す。そのなかには日本人の顔もちらほら。

第1打、球の行方を確かめる必要などなかった。フェアウェイの幅に収まらないはずがないほど完璧なスウィング。ピンまで141ヤードの第2打はやや左足下がりのライからグリーン奥にこぼし、6メートルのアプローチを残したが、テンポよく50センチに寄せパーで切り抜けた。

17番169ヤード、パー3。アドレスに入ると小さな虫がいたずらをする。ボール周りで遊ぶ虫を手で払い、構え直して放ったティショットはグリーン右のカラーへ。ピン横だから距離は合っている。再びタップインの距離に寄せパー。

そのころ前の組で回るサラスは最終ホールで1.2メートルのバーディチャンスを迎えていた。入れば渋野に大きなプレッシャーをかけることができる。だがバーディパットは無情にもカップに蹴られ、サラスは通算17アンダーでホールアウトした。

※「月刊ゴルフダイジェスト10月号臨時増刊 スマイル!スマイル!渋野日向子」より。Part3は9月7日(土)6時30分公開予定。

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