ドライバー迷子は「フェースプログレッション」をチェックしよう!
現在、ゴルフクラブ市場には毎年何十ものニューモデルが登場し、ユーザーにとっては選択肢が多すぎると感じられるほどだ。とくにアベレジーゴルファー向けのクラブの多くがスライスを防ぐことを目的に「つかまる」「曲がらない」と謳い、雑誌やWEBのクラブの試打企画でも同様の褒め言葉が乱舞して、それらの言葉は嘘ではないにせよ、アマチュアにとっては混乱の要因にさえなり得る。
アマチュアの8割を占めるといわれるスライサーにとって、クラブ選びはまさに「迷宮」だ。
そんななか、クラブに詳しいティーチングプロとしてメディアで大人気の“QP”こと関雅史は、自分のスウィングタイプとクラブの特長の相性に、ちょっとした発見があったと話す。その発見とはドライバーのフェースプログレッション(FP)だという。
FPとは、クラブのシャフト軸線に対してリーディングエッジがどれだけ前に出ているかを示す数値。FPの値のプラスが大きいクラブほど「出っ刃」で、FPの値がマイナスのクラブは、シャフト軸よりもリーディングエッジが引っ込んでいるいわゆる「グースネック」であることを示す。
端的に言えば、FPが大きいモデルはシャフト軸線よりもヘッドが早くボールと接触するため、プレーヤーの感覚よりもインパクトが早く訪れる。一方FPが小さいモデルはシャフト軸線よりもヘッドが遅れ気味にくるため、プレーヤーの感覚よりもインパクトが遅めになりやすい。
ドライバーの場合、アイアンのようにFPの値がマイナスになるようなグースネックはなく、ほぼ全モデルが「出っ刃」であるためこれまであまり注目されてこなかったが、関プロはドライバーでも注目すべきだと話す。
「FPって、インパクトのタイミングにかなり大きく影響する要因なのに、ドライバーでは見逃されがちなスペックなんです。でも実は大きいモデルと小さいモデルとで数ミリくらいの差があり、メーカーの開発意図が結構表れている部分でもあるので、もう少し注目してもいいのではないと僕は思うんです」(関プロ)
たとえば「つかまり」を謳ってスライスを軽減してくれるドライバーでも、その手段には大きく2パターンあり、それはFPの設計から見えてくるという。
「FPが小さいクラブは、インパクトでヘッドが遅れてくるので、ダウンブローの鋭角な入射角を緩和してくれる効果があります。つまり、アウトサイド・インで上からぶつけるようなスライスを防いでくれます。反対にFPが大きいクラブは、インサイドからクラブが寝て下りてきて振り遅れるのを防いでくれます。同じスライサーでも、左に出て大きく右に曲がるプルスライスの人は前者が、打ち出しから右に飛び出すプッシュスライスの人は後者が合いやすいということ。ここを見誤ってクラブを選ぶと、同じ『スライスしない』ことを謳っているクラブでも、自分に合わないということがあり得るんです」(関プロ)
もうひとつは「ヘッドの重心位置」
さらに関プロは、FPに加えてヘッドの重心位置も加味してほしいと話す。
「これはヘッドの返りやすさの問題です。重心深度が深くて重心距離が長いクラブはフェースが返りにくいので『フェースを開きにくくして球をつかまえる』ことでスライスを防ぐのに対して、重心深度が浅めで重心距離が短いクラブはフェースが返りやすく『フェースを閉じやすくして球をつかまえる』ことでスライスを防ぎます。これは同じ『つかまる』クラブでも全然違うんです」(関プロ)
これは厳密には重心だけでなく『ネック軸周りの慣性モーメント』の問題だが、一般的な設計の傾向からいえば、重心深度と概ね比例関係にあるので、重心深度をチェックすれば大きく見誤ることはないと関プロは言う。
チェック方法は、ヘッドを上にしてシャフトを竹とんぼのようにグルグル回したときに、抵抗なくクルクルと回るか、抵抗を感じて回転が波打つかどうか。スムーズに回りやすいものほどフェースが返りやすい。
「スライサー向けのドライバーで見れば、FPが大きいドライバーはだいたい重心が浅め・短め、FPが小さいドライバーは重心が深め・遠めの傾向はあると思います。テーラーメイドやキャロウェイ、タイトリストなどが前者的発想で、プロギアやピン、ヨネックスなどは後者的発想のクラブが多いですね。ブリヂストンやダンロップは比較的ニュートラルでこの特徴は薄めかもしれません」(関プロ)
ではFP大・浅重心とFP小・深重心、自分に合っているのはどっちなのか。
「前者が合うのは、アッパーブローでインサイド・アウト軌道の人。ショットの打ち出し方向が右の人です。アイアンのダフリが多く、インパクトを正面から撮ったときに手元が右寄りにある人です。一方後者が合うのはダウンブローでアウトサイド・インのカット軌道の人。ショットの打ち出し方向が左で、ウッドよりアイアンが得意な人。インパクトでは手元が左でハンドファーストが強めな傾向にあります」(関プロ)
「スライスを防ぐ」のが売りのクラブでもスライスが直らないとお悩みの人は、このスウィングタイプとクラブの相性をチェックしてみてはどうだろうか。
撮影/有原裕晶 協力/ゴルフフィールズ
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