ボールの性能が飛躍的に向上をした現在「使い回す」プロは少数派
ひと昔前、ツアープロの間では、試合で使用するコースボールはホールごとに複数球を使い分けるのが常識だった。諸説あるなかで、ティショットでは、プロは50m/sを超えるスウィングスピードによりボールを打ち込むため、ボールの内部構造にもインパクトで相当量の圧力が加わり、一時的に形状に変化が生じるため、ホールアウト後はある一定期間、形状を“回復”させるための時間が必要というのが、複数球を使いまわすおもな理由とされてきた。
では、現在はどうなのだろうか?
ツアー系ボールも年々進化を遂げ、その内部構造であるコア部分も1970年代のいわゆる糸巻き構造から、コア部分を様々な合成素材で覆う2ピース、3ピース構造のボールが開発されてきたことにより、ボール内部の耐久性も飛躍的に向上した。
「今の球はどんな球を使ったとしても、糸巻きのころのようにボールをローテーションする必要ってないと思うよ。打っている最中に、中身の構造が変わったように感じたこともないし、今のボールは本当に頑丈にできていると思うね」。そう話すのは、今年でプロ24年目を迎えるツアー通算7勝のベテラン・久保谷健一。さらに広い世代に、この話題を聞いていくと、若い世代ほど、1ラウンドあたりのボール消費量が少ないことが判明した。
まずは30代の中堅プロ。市原弘大は「だいたい2~3個でまかなえちゃいますね。代えるとしたら、ウェッジで打ったときに見てわかるぐらいの傷が入っちゃったとき。それ以外は、意図的に代えようとは思わないですね」と1ラウンド1スリーブ程度。
片岡大育は6個で「条件があるとすれば、傷が入ったら。あとはバンカー。砂を噛むので」。市原や片岡のように、バンカーやグリーン周りでのウェッジで、外的な要因でボールに傷が「入ってしまった」ケースに限り交換するというプロは他にも多かった。
小さなことは気にしない! とばかりに、さらに逞しいコメントが多かったのが20代の若いプロたち。1ラウンドで「1球」と話すのが、堀川未来夢だ。
「僕は気にしないですね。1ラウンドで1個あれば十分。いつも(コースに)出ていく前はパター打つんですけど、そこで1スリーブ新しいのを3球出して。で、1つをポケットに入れて、もう一つはファンの方かスコアラーさんにあげちゃいますね」
同じく「理想は1球」と話すのが、星野陸也。初優勝した18年のフジサンケイクラシックの最終日が、まさに1球で回り切ってしまったからだという。
「よくよく考えれば、それだけ正確に打てていたということなのかなと思います。木にも、カート道にも行くことなくしっかりとティショットでフェアウェイに飛ばしていたと思いますし」(星野)
若手プロにたちにとっては、少ない球数でラウンドを終えることは、ある意味では自らの好不調のバロメーターになっているのかもしれない。
年代に関係なくプロが“交換”を決意するタイミングは……
その一方で、年代を問わず、ほぼ全員と言っていいほど、ボール交換のタイミングで共通した見解が唯一ある。
それは「2ホール以上、ボギーが続いたら、やっぱり代える」という、試合中の流れをくんでのもの。これは、ボールの性能というより、自らの気分一新を図るのが目的なのは言うまでもない。
プロといえども、やはり1打でもいいスコアを出すためにイメージとはいえ‟苦い記憶“しか残っていないものは、できれば使いたくない。年々、進化するボール性能の向上により、1ラウンドあたりの消費量は減る傾向にあっても、そんな心理面からくる“代えどき”は、今も昔も不変のようだ。