世界最先端のゴルフサイエンスを伝えることを目的に、9月10日から2日間の日程で開催されたインストラクター向けセミナー「ゴルフエンジニアリングセミナーLevel1.5」。そこに潜入したプロゴルファー・中村修が、セミナーの中で特に印象深かったというスウィング軸の判別方法をレポート!

ステンソン型か、タイガー型か、バッバ型か

講師でバイオメカニクスの専門家であるスコット・リン博士によれば、スウィング軸とはその人のスウィングの支点となる軸。左軸、センター軸、右軸の3つに分かれるといいます。そして、そのタイプによって“飛ばし方”も異なるといいます。

画像: スコット・リン博士が明かしたスウィング軸の判別法とは?

スコット・リン博士が明かしたスウィング軸の判別法とは?

軸の説明の前に、飛ばし方の説明をしましょう。最近では、飛ばしのエネルギーには3つの要素があるというのが常識となっています。

1.切り返しでのターゲット方向へのスライド(ホリゾンタル)
2.回転力(ローテーション)
3.地面反力(バーティカル)

この3つです。たとえば、ヘンリク・ステンソンは左軸タイプの選手で、地面反力を多く使います。タイガー・ウッズはセンター軸で回転を多く使うタイプ。バッバ・ワトソンは、左打ちの選手ですが、写真を反転してみてみると、切り返しでターゲット方向へのスライドを多く使うタイプであることがわかるといいます。

画像: 左から左軸タイプのH・ステンソン、センター軸のT・ウッズ、右軸のB・ワトソン(画像は反転させたもの)。軸タイプの違いは左足に表れている

左から左軸タイプのH・ステンソン、センター軸のT・ウッズ、右軸のB・ワトソン(画像は反転させたもの)。軸タイプの違いは左足に表れている

つまり、ゴルファーにはそれぞれスウィングの支点となる軸があり、その軸の位置によって、エネルギーの出し方も異なるということです。そのため、上達のためには自分がどのタイプなのかを知る必要があり、それを知らずに強い選手の真似をしたり、最新の打ち方を取り入れようとしても、タイプが異なれば遠回りするだけになってしまうわけです。

逆に、タイプに沿って練習すれば再現性も高くなり出力も上がるので飛ばせるようになるし、スウィングも安定するといいことばかりだとスコット・リン博士は言います。では、どうやってタイプを判別するのでしょうか。

セミナーで、数人のインストラクターが体験していたので、その模様をお伝えします。画像Aをご覧ください。

1.左足に体重をかけ、右足はつま先で支えるようにしてフルショット
2.右足に体重をかけ、左足はつま先で支えるようにしてフルショット
3.両足をくっつけた状態でフルショット

それぞれで5球ずつを打ち、ヘッドスピード、スマッシュファクター(ミート率)を計測。どのスタンスで打った場合にもっとも結果が良かったかを判別します。弾道計測器を用いるのがベストですが、練習場でどのスタンスが一番当たりが良かったかでも判別可能。

画像: 画像A:3つのスタンスで5球ずつ、ランダムにスタンスを変えながらテストをすることで軸のタイプを判別する

画像A:3つのスタンスで5球ずつ、ランダムにスタンスを変えながらテストをすることで軸のタイプを判別する

また、その際、同じスタンスで5球続けて打つのではなく、ランダムにスタンスを選んで打つように推奨されました。同じスタンスで打ち続ければ、合わないスタンスでもなんとなく上手く打ててしまいますからね。

実際にスクリーンテストを体験した日下部直太インストラクターの例を見てみましょう。テストの結果、左足に体重をかけるスタンスのときにヘッドスピードもスマッシュファクターも高い数値を示し、左軸タイプだと判別されました。

その上でスコット・リン博士は、日下部インストラクターのスウィングをチェック。バックスウィングで左ひざが内側に入りすぎていると指摘していました(画像B)。左軸タイプである日下部インストラクターは、地面反力をもっと多く使ったほうがパフォーマンスがアップするはず。左ひざが内側に入りすぎると左ひざを伸ばす動きがやりにくく、地面反力が活かしにくいというわけです。

画像: 画像B:スクリーンテストを体験した日下部直太インストラクターは左軸タイプ。左ひざをバックスウィングで内側に入れないようにすることで地面反力を多く使えるようになりヘッドスピードがアップした

画像B:スクリーンテストを体験した日下部直太インストラクターは左軸タイプ。左ひざをバックスウィングで内側に入れないようにすることで地面反力を多く使えるようになりヘッドスピードがアップした

このように、科学的な検証に基づいてタイプを判別し、その上でスウィングを修正することができれば、遠回りせずに上達できるのは間違いありません。

過去のレッスンの現場では、インストラクターが自分の打ち方を生徒にも教えるという例が散見されました。先生と生徒のタイプが同じであれば、それで成果が出るでしょうが、タイプが異なれば必ずしも上手くいくとは限りません。

計測器の進化や、それに基づく分析の進化により、一人でも多くのゴルファーがもっと効率よく上手くなり、ゴルフを楽しめる。そんな未来は、もう到来しているようです。

取材協力/エンジョイゴルフ&スポーツ

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