キャディさんの仕事を自分でやるからこその“セルフプレー”
キャディなしのいわゆるセルフプレーは、平成後期からスタンダード化した安価に、気軽にラウンドが楽しめる嬉しいシステムだ。“セルフ”、つまりプレーに関わる全てを自分自身でやることによって人件費を削り、プレー代を下げるのである。
クラブの出し入れやボール拭き、コース説明、距離、傾斜のアドバイスなど、キャディさんがいれば受けられる“サービスを受けない代わりに安くなる”と考えているゴルファーも多いはずだが、“セルフプレー”とはもっと責任が重たいものなのではないかと、個人的には考えている。
それは、通常キャディさんがラウンド中にどんな業務をしているのかを改めて考えてみればよくわかる。整理してみよう。
《キャディさんの仕事 第1群》
・コース説明
・残り距離のアドバイス
・グリーン傾斜のアドバイス
・クラブの受け渡し、管理
・使用したクラブ、ボールの掃除
これだけだろうか? 実はこれよりも重要な業務がある。
《キャディさんの仕事 第2群》
・前後組に迷惑をかけないプレーの進行管理
・プレー中の安全管理
・ディボット跡への目土
・グリーン上、ピッチマークの修復
・使用したバンカーの修復
などである。
最初に書いた第1群は、ゴルファー自身が受けるまさにサービスのようなもので、人によっては“無くても困らない”ものであるかもしれない。しかし、後述した第2群は別である。なぜならそれは、自分以外のプレーヤーのため、そして美しいゴルフコースを保全するために行う必須事項であるからだ。キャディがいないからやらなくていいというものではなく、逆に、キャディがいないからこそ、自分たちでしっかりやらなくてはならないものなのだ。
“セルフプレー”という言葉には、どこかカジュアルで、敷居が低く、お気楽なイメージが漂っているが、実際はプレーヤーの成熟度が試される“レベルの高い”、大人のプレースタイルである。
綺麗に整備されたゴルフコースをプレーしていると、とても大きな幸福感に包まれるものだが、それも誰かがゴルファーの代わりに、日々メンテナンスに尽力してくれているからである。自分が削ったディボット跡にキャディさんがサッと砂を入れてくれる。砂は傷口を守る「絆創膏」のようなもので、処置が早ければ早いほど芝生の修復スピードは早くなる。セルフプレーでは、その絆創膏を代わりに貼ってくれる人はいない。プレーヤーが自分自身でそれを行わなければならないのだ。
セルフプレーを導入すると「一瞬でゴルフコースが荒れる」という。それはすなわち、ゴルファーが“セルフ”の意味を理解していないことを示しているのではないだろうか。
プレーに関わる料金的な敷居は下げるが、逆にゴルファーのレベルは上げていかなければならない。ゴルファーのレベルとは飛ぶ・飛ばない、スコアがいい・悪いの前にあるものだ。セルフプレー全盛時代だからこそ、ゴルファー自身の意識改革が必要。荒れたコースが増えて、不満を口にするのもまた“ゴルファー自身”なのである。