「日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯」で優勝した畑岡奈紗に次いで2位に入り、ここまでの賞金額は2256万8000円でランク41位と初めての賞金シードをほぼ確定させた大西葵。今季の躍進の秘密はどこにあるのか? 本人、兄、コーチに話を聞いた。

すべてのスタッツが良くなっている

昨年までのプロ通算5年間で稼いだレギュラーツアーの賞金額が2526万1357円の大西葵だが、今年は1年間でその5年分に迫るほどの賞金額を稼ぎ出している。

データを見ると、昨年に比べてほぼすべての数字が良化していることがわかる。1ラウンドあたりの平均パット数は31.3だったのが30.2206と実に平均1以上も改善。平均飛距離は225.83から239.10と15ヤード近くもアップ。それでいて、フェアウェイキープ率は63.9706と昨年比2%弱良い数字になっている。パーオン率は約4%アップ。リカバリー率も10%近くアップ。サンドセーブ率も上がり、3パット率は下がり……結果、平均ストロークが2打近く良くなっている。

画像: 初の賞金シードをほぼ手中に収めた大西葵(写真は2019年のリゾートトラストレディス 写真/小林司)

初の賞金シードをほぼ手中に収めた大西葵(写真は2019年のリゾートトラストレディス 写真/小林司)

まるで別人のような今季の成績だが、なにがあったのか? 青木瀬令奈のコーチで、大西の実の兄の大西翔太は言う。

「ショットは石井忍プロに見てもらって、よくなってきていました。(2位に入った)日本女子プロでは、2日目終わって少し時間があったのでコーチというより『お兄ちゃん枠』で30分くらいパッティングを見たんです。そうしたら手だけで打っているように見えたので、腹筋や背筋をイメージして打つように30分くらい練習したらよくなってきました。そしたら珍しく『よくなったよ!』と。普段はそんなこと口に出さないんですが。これで賞金シードにも届いてきたので本当に嬉しいですね」

パターのイップスに苦しんだ経験を持つ大西だが、それを乗り越えたことも、当然今季の躍進にはつながっている。

さて、ショット面に関しては、本人も「石井さんのところに入って変わりました」というように、プロゴルファー・石井忍に習うようになったことできっかけをつかんだようだ。石井は言う。

「『アース・モンダミン』のころからサポートするようになりました。切り返しから左へのスライドが多く、インサイドアウト軌道が強くなり過ぎる傾向があったので、トルク(回転)を多くしてバランスを取るようにしています。それと同時に、ハムストリングの柔軟性を高めて、体も改善しながら取り組んできました。持っているポテンシャルは高いので、これで満足せずに続けて行くことが大切だと思ってます」(石井)

アース・モンダミンカップまでは16試合に出場して5試合しか決勝ラウンドに進めなかったが、アース・モンダミンカップ以降は11試合で7回予選を通過と、目に見える形で成果が出ている。

画像: 新生・大西葵の活躍に注目だ(写真は2019年のフジサンケイレディス)

新生・大西葵の活躍に注目だ(写真は2019年のフジサンケイレディス)

賞金シードをほぼ手中に収めたことで、ずいぶんプレーが楽になるのでは? と問うと、「逆に違うプレッシャーもあるんじゃないかな」と大西。黄金世代を筆頭とした若手の台頭が著しいツアーにあって、イップスを乗り越えメジャーの舞台で2位に入り、賞金シードに当確ランプを点灯させたのは見事の一言。

新生・大西葵の活躍は、今後さらに期待できそうだ。

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