集まったギャラリーは4日間で3万5719人。とくに最終日は1万3000人を超える大ギャラリーが熱戦を見守った「日本女子プロ」。
「とにかくギャラリーが多かったです。まずは会いたい、一目見たいという雰囲気がありましたね。一方、ゴルフのコアなファンの方は、どんなゴルフをするんだろう? 球筋や打球音を直接見て、感じたい、という見方をしていたと思います」
と天沼知恵子が語るのは、言わずもがな、渋野日向子のことだ。天沼自身にとっても、「一緒に回る機会がなかった」ということで渋野を間近で見るのは初めて。その印象を、こう語った。
「足腰が強いし、スウィングがしっかりしています。フォローが大きくて、長く、インパクトゾーンが長いですよね。昔、自分が目指していたインパクトゾーンの長いスウィングですね。上から打ち込むというよりは、ボールを運ぶように打ってます。そして、ティショットもセカンドも攻め方の判断、決断が早いから、見ていて不安がありません。『できないことはやっていない』できることに集中していました」(天沼)
ソフトボールで鍛えられた足腰の強さ、そして、「できないことはやらない」かわりに、できることにはマックス集中する、そのメリハリが印象的だったという。
対して、優勝した畑岡奈紗のことはこう評価する。
「先に海外に出ていたのに(渋野に)メジャーで優勝されたから悔しいとは思います。その悔しさをどこかに秘めていて、日本での試合で結果を出そうとしていたと思いますが、簡単に(結果を)出せるわけではないですし、ほとんどは空回りしてしまうことが多い。よほど努力をしてきたんだろうと思います」
米女子ツアーで3勝。世界ランクも一桁台。海外メジャーに勝てる日本人女子ゴルファーといえば、畑岡奈紗。多くの人がそう考えるなか、42年ぶりにメジャーの扉をこじ開けたのは、スマイルシンデレラ・渋野だった。その悔しさを隠さず、日本に帰国した試合でいきなり勝てる。それこそが、畑岡奈紗の実力ということだろう。
「スウィングは、アドレナリンが出てきたときにインパクトが強くなるのを気にしていたようです。アドレナリンさえもコントロールできていた。本当に落ち着いてるなと思いましたし、(元世界ランク1位の)フォン・シャンシャンですらその落ち着きに付け入るスキを見出せなかったと思います。本当に強い選手です」(天沼)
さて、この試合の決勝ラウンドに進出した61名のうち、畑岡、渋野と同じ98年度生まれの黄金世代のプレーヤーは9人いた。そのことについても、天沼は驚きを隠さない。
「あの(難しい)セッティングで9名、その下の世代も何名かいて、若い選手はすごいなと思いました。不動裕理さんが21歳でプロになって、すぐに試合で活躍したときはすごいと言われました。私たちのころは33歳がピークになると言われていましたから、30代で活躍できるように、20代では5年計画でした。これだけ若年齢化が一気に来るのは、自分の中でも誤算。33歳がピークどころか、20代前半がピークになってきていますね」
渋野日向子と畑岡奈紗はこれからも何度も戦う機会があるはず。日本最強の女子プロは誰か、その争いにさらに下の世代も割って入ってくるようだと、ますます面白くなるに違いない。