ターゲット意識を高める原英莉花。ストロークを磨く山路晶
「これはプロアマ関係なく言えることですが、まずは何を意図しているのかを意識できていないと技術の向上にはつながりません」と大本はいう。
「ゴルフはそもそもパッティングに限らず(目標にむけてショットしていく)ターゲットスポーツなので、僕は7つのイメージに分けて考えています。それぞれのテーマにどうイメージを作るのかが大事です」(大本)
大本の言う7項目とは、【1】ターゲット【2】ボール【3】バランス【4】スウィング【5】クラブ【6】音【7】感触。この7項目が上手に連動すれば、必然的に思い通りの転がりが再現できるのだが、どこか1部分でも狂いが生じると、その影響がすぐに転がりに表れるのもまたパッティングの特徴でもあるという。
プロが練習グリーンで様々な場所にティを差してパッティング練習を繰り返すのは、その連動する感覚に違和感を覚え、修正の必要性を感じているからこそだと指摘する。
「プロでもアマチュアでも100人いたら100人課題も違うのがパッティングですが、プロは何となくでも、何かが『ズレているな』というのを感じることができる人が多い。それを自覚すれば、次に何をテーマに練習すれば改善できるかを考えることができます」
ティをどこに差すかによって、自分が抱える違和感を修正しているのだというわけだ。
たとえば、写真Aでパッティング練習する原英莉花はカップの入り口に2本ティを挿している。「転がる方向に何か置く(差す)ということは、ターゲットの方向、またはそこに近い部分に何かしらのイメージ、感覚を出したい」(大本)ということになる。
写真Bの山路晶のパッティングで言えば、クラブやボールの転がりを限定する2本のティは、クラブヘッドの通り道にある。「ヘッドのところに(ティを)置くのであれば、クラブのストロークのイメージを作るのが目的です」(大本)
渋野スタイルと併用するとより効果的!?
また、プロでも渋野日向子のように「9回打って、外すのは2回まで」といった、試合を想定して、練習の1打のなかにも自分にプレッシャーをかけて行う練習法もあるが、この利点は「練習で作り上げたイメージを、本当にできるのか」という再現性をテストする意味合いがあるという。
大本曰く、このような練習では「体に動作の指令を出す脳の整理ができているか」も試されるという。
「プロでも2メートルのパットが入るのは実際には5、6割。2回に1回は外すわけです。でも入れるためには何が必要かを考えたときに、そのときになってできることは『決めたことをやるだけ』なのです。結果的に外す場合は、それができていないケースがやはり多いです。普段、やっていることの感覚、イメージをどれだけ生かせるか。プロでもアマチュアでも、結局はそこに尽きるのですが」(大本)
また、この練習法によって仮に確率が悪かった場合ならば、また7項目の‟イメージ作り”を見直して修正点を洗い出す作業も必要だという。
「(渋野の練習法を)1メートルで何球入ったのかや、時間で区切ってもいい。それをもとに自分を知ることが大事です。『何が良かったのか』『何が悪かったのか』を考えようとしない人は多いですが、何が練習通りにできて、何が練習通りにはいかなかったのか。それが上り下りなのか、フック・スライスなのか、左・右・真ん中なのか……。基本的にはそこを知って『どこを改善して、どのレベルを目指すのか』が見えてくると思います」。
まずは己を知るための様々な‟ティ差しパット練習”で技術を磨き、その仕上げに‟シブ子流”を活用すれば、アマチュアゴルファーでもプロのような「本番力」を高めることができそうだ。