ただ地面を蹴るだけでは体が伸び上がってしまう
効率よくヘッドを走らせるために、原田プロがスウィングで重要視しているのが、地面反力を利用することだという。
地面反力を簡単に説明すると、地面を強く踏み込む、あるいは蹴り込んだときに跳ね返ってくる力(フォース)のこと。この地面反力を利用したスウィングとしては、世界一の飛ばし屋であるダスティン・ジョンソンのように、地面から跳ね返ってくる力を利用して、体を水平方向に素早く回転させる「ホリゾンタルフォース」。また、地面からの反力を使って、体を縦(垂直)方向に動かす「バーティカルフォース」がある。こちらの代表選手はやはり世界でも屈指の飛ばし屋であるバッバ・ワトソンだ。
そして原田プロがスウィングに取り入れているのも、この「バーティカルフォース」なのだという。そこで、地面反力を使って、ヘッドスピードアップ、飛距離アップをしたいと思っているけど、どうやればいいかよく分からない、やってみたけど上手くいかないというアマチュアのために、原田プロがそのコツを教えてくれた。
「最重要ポイントは足で地面を踏み込み、そして跳ね返ってきたパワーを、いかにしてクラブヘッドに伝えて、連動させていくかです。ボクが以前から意識して取り入れているバーティカルフォースは、地面からの反力を縦方向のパワーに変換しますが、イメージとして分かりやすいのが、剣道の面を打つ動作なんです。左足を踏み込むことで剣先をビュンと走らせる。ボクが実践している地面反力スウィングも同じで、地面を踏み込むことで、シャフトを縦にしならせるイメージが必要なんです」(原田、以下同)
原田プロによると、剣道には「気剣体の一致」という言葉があり、それがゴルフのスウィング、そして地面反力を利用してヘッドスピードを上げるためにも必要なのだという。
「気持ち、竹刀の動き、体さばきの3つが常に一体、一緒になっていなければダメで、ひとつでも欠けると有効打にはなりません。地面からの反力をクラブヘッドに伝える感覚をつかむ練習法としては、シャフト部分がやわらかい素振り用のスティックなどを持ち、手は使わずに両足の屈伸動作による踏み込みだけで、スティックを縦にしならせるドリルが効果的。これで効率よく連動させるタイミングをつかみましょう」
また、クラブを右手で持ち、左足1本で屈伸するように地面を踏み込んで、右方向に(自分から見て)にグルグルと回してみるのもいいという。
「たとえば、ブランコを自分で漕いで加速させるときの感覚にも近いですよね。自分の手で意識的に回そうとしなくても、どのタイミングで足を踏み込めば回転のスピードを増すことができるか。クラブを回しているうちにつかめてくるはずです」
そして地面反力をより有効に利用するためには、股関節の柔軟性、可動域も大事なポイントになるという。
「ボクはそのために日頃からスクワットなどのトレーニングをやっています。股関節の可動域を広げるとともに、お尻や太ももの筋肉を強化することで、より多くの地面反力を得られるようになるんです」
ただ、アマチュアが地面反力を取り入れる場合に起こりやすいのが、ダウンスウィングからインパクトで体が伸び上がり、前傾姿勢が崩れてしまうことだ。その悪い動きを防ぐにはどうすればいいのだろうか。
「ポイントは上半身、特に胸の動きにあります。下半身は地面を踏み込みながら、胸は下に押さえ込む。たとえば、両ひざを立てて腹筋運動をするときは、自分のおへそを見るように胸を丸めていくのが、腰に負担がかからず、効果的に腹筋を鍛えられる正しいやり方です。胸は下に押さえ込むというのは、この腹筋動作のイメージに近いんです。また、仰向けに寝た状態で上半身と下半身を同時に上げて、Vの字を作るトレーニングも、バーティカルフォースのスウィングイメージに近いので効果がありますよ」
地面から跳ね返る力を働かせるのは、あくまでも縦の地面方向。目標方向へクラブを動かそうとすると、体が伸び上がって前傾姿勢が崩れてしまいやすい。
「腹筋運動と同じく、腕立て伏せもまた、胸を下に押さえ込む感覚をつかめるし、地面反力をより効率をよく利用するためのトレーニングとしても最適です」
原田プロが教えてくれた素振りやドリルで正しい体の使い方を覚え、それと並行して動作イメージが近いトレーニングやストレッチを行う。これでより質の高い地面反力スウィング「バーティカルフォース」をマスターしよう。