年間約2500時間の練習を18歳まで継続した
「まだ咲希が小さい頃。宮里藍ちゃんが高校生で優勝(2003年のミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン)して、そのときに子どもをプロにさせたいと思った親が多かったんですよ」(靖宏さん)
日本中で沸き起こった藍ちゃんフィーバー。その熱気の中で多くの親が子どもをプロに! と思ったものだが、靖宏さんもその一人。そして娘・咲希を“確実に”プロにするためにある秘策を考えた。
「アスリートになるために1万時間の練習が必要だというのが一般的ですが、確実にプロになるために1万5千時間から2万時間練習が必要だと考えたんです」(靖宏さん)
1万時間の倍の2万時間なら確実にプロレベルに届くはずという大胆な考え方だが、それを実行して実際に娘がプロとなり勝利まで挙げたのだからすごい。それにしても具体的にどんな練習メニューをこなしたのだろうか。
「プロになるためにどのくらいのスキルが必要なのかスタッツ(ツアーの部門別データ)を調べて、ドライバーの飛距離は240ヤードいるなとか、パーオン率は70%以上いるとかを考えたんです」(靖宏さん)
実際に、当時靖宏さんが作成した資料を見せてもらうと、そこには【プロへの到達条件】として、
18歳までに累計20000時間の練習を実施することを筆頭に、パット数はハーフ14以下、365日の練習実施、風の強い日、雨の降る日はとくに練習するといったことが書かれ、さらにはハーフ14パット以下を達成するための練習法などが事細かに書き込まれている。
「そういった技術を身につけるための練習法をとにかく調べて“1か月シート”を作りました」(靖宏さん)
“1か月シート”とは練習メニューなどが記載されたスケジュールシートで、それを続けることで“2万時間”に至る。いわば1日の時間割のようなもの(画像参照)。
当時のことを淺井本人はこう語る。
「1日8時間練習しなきゃいけないんだとか、土日は学校ないから朝何時から(練習に)行ってとか気にしながら練習していました(笑)」(淺井)
実際にそのシートを見てみると淺井家の朝は5時からスタート。学校に行くまでに2時間練習、帰宅後5時間みっちり練習している。この目安に従って練習すると年間の練習時間は約2500時間。8年続ければ、2万時間に到達するスケジュールだ。
「自分一人だと厳しかったと思うけど、兄弟も同じことをしていたから続けられたんだと思います」とは母・圭子さんの弁だが、兄弟と切磋琢磨しながら練習に励んだ淺井は見事プロテストに1発合格、ルーキーイヤーに初優勝を挙げるまでに成長。父の「2万時間理論」の正しさを証明した。
淺井のように、とにかく練習に次ぐ練習で勝利にまでたどり着いた選手に、黄金世代のひとつ下世代の稲見萌寧がいる。稲見の場合練習時間は1日10時間。ゴルフをはじめた9歳からプロ入りした18歳までだと3万時間以上練習をしていることになる。
もちろん、誰でも練習さえすればプロになったり勝てるようになるというものでもないだろう。それでも継続は力なり。努力はやはり裏切らないようだ。