マシュー・ウルフ、コリン・モリカワ、ビクトル・ホブランら、米国大学ゴルフ界で活躍した選手が即PGAツアーでも活躍する姿が見られる。実は、日本のジュニアゴルファーたちも進学先として国内ではなく、アメリカの大学をえらぶケースが増えているという。その背景にあるものはなにか。在米ゴルフアナリストのアンディ和田が解説。

強豪校はプライベートジェットで移動

近年、アメリカ大学ゴルフ出身の選手達が米PGAツアーですぐに結果を残すことが増えてきていますが、多くの日本人学生ゴルファーたちがアメリカの大学ゴルフ部に所属して文武両道に励んでいるのをご存じでしょうか?

昨年の日本国籍を保持する米留学大学生ゴルファーは46名。 今年は更に増えて50名(男子33名、女子17名)に達しています。先月末から新学年の秋シーズンがスタートしましたが、女子では宮本香怜(ワシントン大)や小堀桃花(ペッパーダイン大)、男子は大澤一輝(ラファイエット大学)らが個人優勝を収めるなどレベルは上がってきています。

画像: 世界アマランク252位の小堀桃花(右)、332位の谷田侑里香(左)

世界アマランク252位の小堀桃花(右)、332位の谷田侑里香(左)

今週中国で開催されるアジア太平洋アマチュアには日本のナショナルチームメンバー4人(昨年優勝の金谷拓実、米澤蓮、中島啓太、桂川有人)に加えて世界アマランク上位の青島賢吾(ウェイクフォレスト大)と吉原英駿(UCLA)が参戦します。

5年前にさかのぼりますが、2014年9月に軽井沢で開催された世界アマチュアチーム選手権で私は解説担当で会場で取材をしていました。

上位に絡んだ多くの国々の選手達はアメリカのNCAA大学ゴルフ部に所属し、国という枠を越えコミュニケーションを取り、大半の選手達はリラックスしたムードでプレーしていました。

日本は他の国々の選手とコミュニケーションは取れず緊張した表情で力を出し切れず男子29位、
女子8位という結果で終了。 ブライソン・デシャンボーが最終ホールで優勝パットをねじ込みアメリカが団体優勝、 個人戦はアリゾナ州立大に所属していたスペインのジョン・ラームがメダリストでした。

その年に米大学ゴルフ部に所属している日本人選手を探したところ数は10名未満だったと記憶しています(当時活躍していたのは現在国内下部ツアーのAbema TVツアー参戦中の杉本エリックや伴翔太郎など)。

その頃は宮里藍や石川遼が海外で活躍していたとき。 彼らに憧れるジュニアたちやご両親が海外志向のビジョンを持ち、積極的に海外の試合にスポット参戦したり、JJGA(日本ジュニアゴルフ協会)の派遣選手としてアメリカのジュニア競技に出場するようになり、興味を持つケースが多かったようです。

30年以上前の私事になってしまいますが、私は14歳で渡米し、アリゾナ大学ゴルフ部に所属し卒業したこともあり、ここ5年間、ジュニアゴルファーやご両親に対して語学や技術的なレベルに相応する留学先をアドバイスするため、40校以上の大学を取材したり正式に訪問をするアシストやコーチング活動をしています。

ゴルフ部があるアメリカの大学の数は多く、全部のレベルを集めると男子1300、女子950ほどあります。そんな中でアメリカンフットボールやバスケットボールなど体育会の予算が豊富なのは「パワー5コンファレンス」と呼ばれる5つのリーグに所属する計65の大学です。

予算のある大学はメンテの行き届いた大学の所有コースや練習施設。加えて屋内練習場とジムもあります。移動はプライベートジェットや豪華なチームバス。大学によっては毎年マスターズが行われるオーガスタナショナルでプレーしたりPGAツアーやメジャー開催のコースでプレーできるなどの特典などもあります。

体育会ゴルフ部でも学業特別扱いはなし

勉強のほうは体育会の選手だからといって特別扱いはなく、しっかりと授業を受けて好成績をキープしないといけないので両立は大変です。科目毎の家庭教師や遠征先にも学業面のサポートがついてきてくれるケースもあり分刻みの忙しいスケジュールですが、体育会の学生たちはがんばっているようです。

画像: 左から世界アマランク108位の青島賢吾、207位の大西魁斗、463位の丸山奨王、194位の吉原英駿、378位の呉司聡(写真は2018年のジョージア対抗)

左から世界アマランク108位の青島賢吾、207位の大西魁斗、463位の丸山奨王、194位の吉原英駿、378位の呉司聡(写真は2018年のジョージア対抗)

世界アマランク上位の米留学選手たちは以下の通りです。

世界アマランク名前大学名
108位青島賢吾ウェイクフォレスト大
194位吉原英駿UCLA
207位大西魁斗南カリフォルニア大
378位呉 司聡州立東テネシー大
463位丸山奨王UCLA
145位佐々木理乃ワシントン大
252位小堀桃花ペッパーダイン大
332位谷田侑里香ミシガン州立大
357位宮本香怜ワシントン大
583位田所星良カンザス大

米大学ゴルフ界の経験を経て日本のプロゴルフツアーで活躍した選手といえば手嶋多一(アラバマ州アレキサンダーJC/州立東テネシー大)、東尾理子(フロリダ大)、佐藤信人(NMMI /ネバダ州リノ大)、塚田好宣(NMMI / SEルイジアナ大)、貞方章男(ブレバード大)、伊藤佳子(オクラホマ州立大)などがいますが、圧倒的な強さをみせオールアメリカン第1チームに輝いた選手は2人。

五輪女子ゴルフコーチを務める服部道子は、17歳のときに全米女子アマチュアのビッグタイトルを獲った後、テキサス大学に進学。個人優勝10回、年間最優秀選手に選ばれています。 またPGAツアーで優勝を収め約10億円を稼いだ今田竜二(ジョージア大学)は1999年のNCAA全国大会団体優勝に貢献していました。

画像: テキサス大学で活躍した当時の服部道子(写真は2列目の左から2番目)

テキサス大学で活躍した当時の服部道子(写真は2列目の左から2番目)

現在の留学生たちが将来PGAツアーやLPGAツアーで活躍するかどうかはわかりません。しかし、言葉だけでなく、米文化を肌で感じ、自己主張を覚え国際感覚をつけていくゴルファーたちが、将来日本のゴルフ界に何らかの形で貢献することは間違いないでしょう。

また機会をみつけて頑張っている学生ゴルファー達を紹介してどんな生活を送っているのかをご報告していきますので楽しみにしていて下さい。

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