常に体がヘッドより先に動く
クラブヘッドを効率よく走らせ、ヘッドスピードをアップさせるために必要なのが「キネティックシークエンス」。分かりやすく言うと、動きの連鎖、連動性だ。
「たとえば、サッカーで強いシュートを打つには、ボールを蹴る足の先端を速く走らせる必要がありますよね。そのためには蹴り足からもっとも遠い、反対側の手から動き始め、そこから上体、腰、下半身と連動することで蓄積されたパワーが、最後に足の先端にまで伝わる。これがキネティックシークエンスです。ゴルフのスウィングの場合、先端のヘッドからもっとも遠いのは足になります。下から上へと動きを連鎖させ、最後にヘッドが振られるのが理想です」(原田、以下同)
これができると効率よくヘッドスピードがアップし、パワーがなくても飛距離が出せるようになるのだという。
「具体的に、動きの順番で説明すると、まずテークバックの始動はクラブヘッドから動かすのではなく足から動いて、右サイドに90%ぐらいの圧をかけていきます。右サイドに圧をかけていくときは、同時に右への回転動作も加わります。右に圧をかけながら、右足首からねじり上げていくイメージです。その動きが徐々に腰、上半身と伝わり、それに引っ張られるように、最後にクラブがトップに向かって上がっていきます」
たとえば、野球のバットのような重量のあるものだと、手先だけでは振りにくいので、下半身から上半身への連動を意識しやすい。しかし、ゴルフのクラブは軽量なので、つい手先で操作してしまいがちだ。
「最初はゴルフのクラブではなく、バットの形状をした重い素振り用の練習器具などを使うと、連動性のあるスウィングを体に覚え込ませるのに効果的ですね」
トップへとクラブを上げていくときと同様に、切り返しからダウンスウィング、そしてインパクトに向かってクラブを下ろしていくときも、先に動き出すのはクラブヘッドや手先ではなく下半身だ。
「バックスウィングでクラブがトップに上がりきる前に、今度は左サイドに圧をかけていくことで、下半身はダウンスウィングに向かって動き出します。ここで注意してほしいのは、多くのアマチュアの方はトップからの切り返しで左サイドに踏み込んでいくときに、上半身も一緒に左へ動いてしまうんです。これでは連動性が失われてしまいます。上半身はまだトップに向かって動きながら、下半身はダウンに向かって逆の方向に動く。下と上が反対方向に引っ張り合うイメージを持ちましょう」
上下が引っ張り合うことで、意識的に手先でクラブを引き下ろさなくても、自然に手元とクラブが下りてくる。これが連動性のある正しい切り返しの動きだという。
「下半身先行による左への踏み込みでクラブを切り返した後は、左足首からのねじり上げで体を回転。さらに地面を強く蹴り込むことによって、体の回転スピードを加速させ、その遠心力によって最後にヘッドが振られるという順番になります」
最近はあまり左右の体重移動を使わず、体の回転でスピードを出すスウィングが、欧米のトッププロを中心に主流となりつつあるが、「プロは連動でクラブを振ることがしっかりできていますが、アマチュアがそれを真似しようとすると、どうしても手先からクラブを操作しやすくなってしまうんです。左右の動きを入れることで、体の連動性を意識しやすくなるメリットがあるので、ボクが生徒さんにレッスンするときも、最初は少し意識的に横の動きを使うように教えています」
効果的な練習の方法としては、重さのあるバット形状の素振り用練習器具に加えて、ドライバーよりも長い棒を振るのもいいという。
「長い棒を振ると、体の動きに対して、先端が遅れて動く、あるいは振られる感覚をつかみやすいんです。また、ヘッドのついていないシャフトの先端に長めのリボンを結んで振るのも効果的です。長くて重めの棒、先端にリボンを結んだ軽いシャフトの順番で感覚がつかめたら、総仕上げとしてドライバーを逆さまに持って素振りをします。軽いクラブをさらに逆さに持つことで先端を軽くし、あえて体の連動性を意識しにくい状態にするんです。これを最初の長くて重い棒を振るイメージでスウィングします」
長くて重いものから、リボンのような軽くてたわむもの、そしてクラブを逆さに持つという順番で素振りをすることで、正しいキネティックシークエンスを体に染み込ませていく。これでヘッドスピードアップは間違いなしだ。