女子ツアー「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」を制したのは柏原明日架。彼女のクラブセッティングで特徴的なのが、11番ウッドを採用していること。最近見かけなくなった11番ウッドの強みを、ゴルフトレンドウォッチャー・コヤマカズヒロが解説した。

アマ時代から将来を嘱望された柏原明日架が、プロ6年目にして初優勝した。170センチを超える体躯から繰り出す、伸びやかなスウィングは、まさに大器といったところ。多くのファンがそのポテンシャルに期待していただけに、この優勝は遅すぎる感さえある。

画像: プロ6年目にして初優勝を飾った柏原明日香(写真は2019年のミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン 撮影/大澤進二)

プロ6年目にして初優勝を飾った柏原明日香(写真は2019年のミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン 撮影/大澤進二)

柏原のクラブセッティングで特徴的なのが、女子プロでも珍しい11番ウッドが入っていることだ。多くの女子プロは、ロングアイアンの代わりにユーティリティを入れている。男子プロに関しては、まだまだロングアイアンを使う選手が主流だ。

柏原の11番ウッドは、5番アイアンの代わりで、180ヤード前後を打つクラブだ。女子ツアーのセッティングでは、パー3や長いパー4で残りやすいこの距離を、高弾道でグリーンを直で狙うのに威力を発揮している。スイートエリアは広く、しっかりとスピンが入るので、方向性の面でも優位に働いているだろう。

言うまでもないが、ウッドのほうが、アイアンはもちろん、ユーティリティよりもボールは上がりやすい傾向がある。仮に薄めに当たったとしても、グリーンに止めるのに十分な高さが出せるはずだ。ラフからのショットでも、アイアンならフライヤーでグリーンに止めきれない状況で、11番ウッドなら高さで止めるチャンスがある。

7番ウッドから下のウッド番手、通称ショートウッドは、90年代から2000年代前半に、キャロウェイの7番ウッド「ヘブンウッド」のヒットで脚光を浴びた。90年代だけで3度の全米女子オープンを制したアニカ・ソレンスタムや2000年にはじめて賞金王になった頃の片山晋呉が、ショートウッドを武器にツアーを席巻していたのだ。

画像: 柏原は5番アイアンの代わりにキャロウェイ「ローグ」の11番ウッドを入れている(撮影/大澤進二)

柏原は5番アイアンの代わりにキャロウェイ「ローグ」の11番ウッドを入れている(撮影/大澤進二)

しかし、近年はショートウッドの存在感はそれほどでもなく、ユーティリティを使う選手が圧倒的になった。自在にショートウッドを操っていた名手二人も、アニカはウェイトトレーニングによるパワーアップでアイアンに持ち替えて大活躍。片山はユーティリティを駆使して、今もショットメーカーぶりを発揮している。

彼らですら、ショートウッドを卒業した理由は、その弾道が高すぎるからだろう。バックスピン量は多く、風にはどうしても弱くなる。打点のブレによるスピン量の差もアイアンより大きい。また、アイアンやユーティリティのほうが目標に対してラインを出しやすい側面もある。

近年は、ショートウッドの人気がもう一つということもあり、そもそもラインナップしているメーカーも少なくなった。柏原の11番ウッドも国内販売がなく、アメリカで販売している仕様だという。

一方、発売されている現代のショートウッドは、2000年前後に販売されていたものとは異なり、適度にスピン量が抑制され、より強い弾道になりやすい。同じロフト角なら、以前よりかなり飛距離性能が向上している。俗に言う、吹け上がる弾道が出にくくなっているのだ。

柏原が9番、11番ウッドを駆使できるのも、そうしたショートウッドの性能の向上が理由のひとつだろう。アマチュアでもボールが上がりきらない人は7番以下のウッドを試してみる価値はある。一方、現代の女子プロは、みんなユーティリティが上手い。これを機にショートウッドに持ち替える選手が増える、みたいなことも特にはなさそうだ。

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