世界ランクトップ10でまだメジャーに勝っていないのはジョン・ラーム、パトリック・キャントレー、ザンダー・シャウフェレの3人。トップ30まで範囲を広げるとポール・ケイシー、トミー・フリートウッド、リッキー・ファウラー、マット・クーチャー、松山英樹らが無冠の大器ということになりそうだ。
欧米メディアがよく「次にメジャーに勝つのは誰か?」という特集を組んでいるが、そこで必ず名前が挙がるのがクーチャーとファウラー。「この2人には1つでいいからメジャーに勝たせてあげたい」と肩入れする関係者が多い。
しかし歴代の選手でメジャー無冠ながらもっとも強かったのは誰か? となると話は別。総合的に評価するとコリン・モンゴメリーとリー・ウェストウッドはメジャー無冠最強の称号に相応しいのではないだろうか。
ウェストウッドは00年と09年に欧州ツアーの賞金王に輝き、10年にはタイガー・ウッズを退け世界ランク1位にもなっている。90年代の後半、変則スウィングのぽっちゃりした童顔の彼が初来日でいきなり住友VISA太平洋マスターズに優勝、連覇したのは忘れられない。
しかしメジャーではマスターズで2度、全英オープンで1回2位に入っているが優勝はない。08年の全米オープンでも1打足りずにタイガーvs.ロッコ・メディエートのプレーオフに加われず3位に甘んじている。
朋友のダレン・クラークは「引退を考えていた」11年の全英オープンを42歳で制覇。46歳にして未だ世界ランク60位前後をキープしているウェストウッドにもラストチャンスは残されているはずだ。
もうひとり“モンティ”ことモンゴメリーはヨーロッパツアー通算31勝、7度の賞金王に輝いた最強の戦士。欧州では無敵だったがアメリカでは長らく“ヒール”扱いされPGAツアーでの優勝はない。
94年の全米オープンではアーニー・エルス、ローレン・ロバーツと三つ巴のプレーオフに敗れ、95年の全米プロでは再びスティーブ・エルキントンとのプレーオフの末涙をのんだ。さらに97年の全米オープンではエルスに1打及ばず惜敗すると、ひと目もはばからず大声で泣きじゃくった。
その頃から自然発生的にアメリカで「Be nice to Monty(モンティにやさしくしよう)」のスローガンが誕生しヒールから脱却。シニア入りしてからは全米プロシニア2勝、全米シニアオープン1勝を挙げ「アメリカで勝てない」「メジャーに勝てない」という汚名を返上した。
それにしても4日間戦ってたった1打しかスコアが変わらないほど実力が拮抗する世界で勝敗を分けるのはなにか? 神の采配? はたまた生まれもった運? その命題は永遠に解けることはない。